忘却
水野スイ
忘却
奪うものなら、なぜ神は与えたか。
奪われるべきものなら、なぜ神は与えるべきか。
大きな喪失感に見舞われて粉々になるなら、こんな感情を知りたくはなかったのに。
最初から知らなければいいことを、僕は無駄と詠んだ。
人を愛すことも、思う事も、愛される事も思われる事さえも、無駄だった。
しかし神はいかにして残酷なのか、僕は知らず知らずとも彼を愛した。
知恵の実を食し、人は進化し再び退化していく。
華やかに散る桜が川へ流れるとき、その美しさを桜は忘れているように。
母なる大地への帰還、それは人間の身勝手な、都合の良い原罪でしかない。
だから神は人間に逢いという名の罰を与えた。
逢わなければよかったものを、知らなければよかったものを、与えたのは我々の原罪の罪滅ぼしのためか。
華やかに散る粉雪が土へと還るとき、その美しさを人はまた思い出せるのだろうか。
忘却 水野スイ @asukasann
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