15 一番二番、災難は終わらず

 意識が、かなりはっきりしてきた。


 二番のほうに、這いずる。


 二番。なんとか、無事でいるらしい。


「おい。起きろ。おい」


 二番。目を開けた。


「あれ。わたし」


「声を聞いて倒れてたんだ。やばい奴らがいるもんだ」


「一番。けがは」


「ない。身体が上手く動かせないが、なんとか、大丈夫だ」


「よかった」


 足音。誰かが、駆け寄ってくる。


「二番。身体は動かせるか。銃を」


「だめです。わたしも、うまく身体が。動かせなくて」


 足音。こちらの近くで、止まる。


「おい。すまんな。協力してほしい」


 さっきとは、まるで違う声。


「お前じゃない。女のほうだ」


「あ、え。うそ」


 二番。急に、立ち上がった。


「俺は、声でひとをころせる。そうやって、声で相手を縛り付けることもできる。まあ、そこに転がってる男が、人質だ」


「やめて」


「俺が一声かければ、この男はしぬ。それがいやなら、協力してくれ」


「わかりました」


「助かるよ」


 待て。


 行くな。


 声に、ならなかった。

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