10 殺し屋、そして逃げる女

「危なかったね?」


 闇のなかで、相棒の身体がしなやかに舞ったのだけを、かろうじて見てとった。


「助かった。さすが古代からの武術」


「銃弾ぐらいは弾き飛ばせるよ。君が無事で良かった」


「待て。そこで止まれ」


「ん?」


「なにかおかしい。おまえ、銃弾をどうやって弾き飛ばした」


「普通に、拳と腕で。軌道を逸らす感じで。ゴム弾だったみたいだから、傷もついてない」


「身体。異状はないか」


「なんで?」


「光った。何かが」


「光ったって、僕の腕が?」


「たぶん、そうだ」


「待ってね。いまライトを。あれ。なんだこれ」


「どうした?」


「端末が動かない」


 気配。


「おいっ。待てっ」


 女が、ガラス固化体を持って逃げる音。


「追って追って。僕は大丈夫だから」


「いや。これは、なにかおかしい。尋問が先だ」

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