第6話  結末

「え、なんで……」


 結沙がいきなり頓狂な声を上げたので、スマートフォンを覗き込むとなぜかロックが解除されてホーム画面に切り替わっていた。


「はあ? どうやったんですか」


 訝しげに尋ねると結沙は大きな瞳をさらに丸くした。


「顔認証できちゃった……みたい」

「んなバカな」


 すると次の瞬間、触れてもいないのになにかのアプリが開かれ、そして動画が再生され始めた。僕たちはその映像を固唾を呑んで眺める。

 そこに映っていたのは窓から見える夕焼けと鉄塔。

 そして室内の風景から不意にクローズアップされたノートパソコンのスクリーンセイバー。それは数秒おきに切り替わっていく女子の写真。

 僕はおもわず呟いた。


「これ、夢に出てきた人」


 それから映像は床を向き、しばらくしてボソボソとした男女の会話が聞こえた。

 そして画面が激しく揺れたかと思うと小さく鋭い悲鳴が響き、それからはただ白い天井を映すばかりの静止画になった。音声だけになった動画は、けれどそこでなにが起こったのかをこれ以上ないほどつまびらかにしていた。

 やがて音声が途絶えると僕と結砂は互いにこわばった顔を見合わせた。


「やっぱり交番に行かなきゃ」


 呆然とした結砂の言葉に僕はうなずき、そして踵を返して坂を下り始めた。

 するとその刹那、僕は背後に誰かの声を聞いた。

 

 ありがとう……。

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