ぼっち、ほぼ女子高に入学します
@aosuzunazuna
第1話
僕は昔から友達がいない、いわゆるぼっちだ。でも高校からはぼっちを卒業するんだ。そう思い高校は家から遠くて僕のことを知っている人のいないところを選んだ。
そして今日は入学式、今日から楽しい学校生活が始まる。そう思っていたんだけど……
「遅刻してすいません」
「
「はい……」
「話はあとで職員室で聞きます。席は出席番号順ですのでとりあえず自分の席に座ってください」
初日からやらかしてしまった。周りの視線を感じながらも席に着く。最初の印象って大事なのにこれ絶対悪い印象ついちゃったよな……。
「この時間はもう特にやることはないので自由時間でもいいのですが、出席番号順というのもつまらないでしょうし席替えでもしますか?」
どうやら、入学式やらこの時間にホームルームでやることはもう終わってしまったらしい。みんなが次々と席替えに賛成していく。
「では、くじ引きで席替えしましょう、くじを持ってくるので少し待っていてください」
そういうと職員室から番号の書いてあるくじを持ってくる。
そして先生が戻ると順番に先生の用意したくじを引いていく。僕は少しドキドキしながらくじを引いた。
「四〇番……」
僕が引いた席は一番後ろの窓際の席だった。席は一番いいの引けたから、あとは周りに男子がいるかどうか。少し緊張しながら席に着き周りを見渡す。
隣の席は――誰もいない、今日は休みなのかな。斜め前の席は――ツインテールに眼鏡の女の子。前の席は――近くの女子と談笑している明るい女の子。
あれ、周り女子しかいないんだけど。コミュ障発揮する気しかしないんだけど。男子でも積極的に話しかけられるわけじゃないけどこれ心臓持たないよ……。まあ男子少ないからしょうがないけど。この先の学校生活に不安を感じていると、教室の前の扉が開く音がした。みんなが注目する。あれ、あの子って今朝の……
「遅れてすいません、保健室に行ってました」
「
「はい、手当してもらったのでもう平気です」
「では席に座ってください、君の席は一番後ろの空いている席です」
あの子同じクラスだったのか。手当してもらったとはいえもう歩いて大丈夫なのだろうか。
僕の心配をよそに皆の視線を浴びながら教室を歩いていく。僕はその姿に思わず目を奪われる。
そして教室の一番後ろまで来ると、僕の隣の席に座った。これって挨拶したほうがいいのかな、でも自分から話しかけるの苦手なんだけど……。そんなことを考えていると肩をトントンと優しくつつかれる。
「私、
「えっと、僕は
神薙さんっていうのか、改めて見るとすごい綺麗な顔立ちしてるなぁ、芸能人だって言われても全然違和感ないくらい。
「さっきは助けてくれてありがとね」
「いや、僕は何も……」
今朝登校しているときに怪我をしている子を見つけたから、使ってないハンカチで応急処置をした後、一人で歩くのが辛そうだったので保健室まで付き添ったんだけど、まさか隣の席の子だったなんて。
「あの、さっきの怪我は大丈夫なの?」
「うん、まだ痛いけど大丈夫だよ」
少し心配だけど、しっかり手当してもらえたみたいでよかった。
「あ、御白くん先生に怒られなかった? 保健室まで付き添ってくれたからだいぶ遅刻しちゃったよね……」
「とりあえず怒られなかったけどあとで職員室で話聞くって言われたよ」
「御白くんが遅れたのは私のせいだし、私も一緒に職員室に行くよ」
「え、そこまでしなくて大丈夫だよ?」
「ダメだよ、ちゃんと説明しなきゃ」
力強く言われて僕は思わず頷く。ほんとに大丈夫なんだけどな。
そんなやりとりをしていると3時間目の終わりの時間が近づく。
「皆さん、少し早いですが休み時間にしましょう。次の時間は学級委員を決めるのでよろしくお願いします」
そう言い残して先生は教室を出ていった。ずっと敬語で話して凄い丁寧な話し方をする先生だな……。
次は学級委員決めるって言ってたけど男子と女子一人ずつとかなのかな? こんなに女子が多い学校で学級委員になったら大変そう……。
休み時間になってそれぞれ携帯をいじったり談笑を楽しんだりしている。僕も今のうちに話しかけたりして友達作り頑張らなきゃな。
「あの、御白くんって帰り道どっち方向?」
席を立とうとしたとき神薙さんに話しかけられた。
「えっと、駅の方向だけど」
「職員室行った後一緒に帰らない?」
女子と一緒に帰ったことなんてないので一瞬驚きすぎて思考が止まってしまう。
「い、いいよ」
思わず声が少し震えてしまった。
「やった、楽しみにしてるね」
神薙さんは嬉しそうに言う。こんな風に笑うんだ……。少しドキッとして顔をそらす。それにしても僕が女子と一緒に帰るって、どうしよう。今から緊張してきた……。
*
「皆さん、座ってください。休み時間は終わりましたよ」
先生に言われみんな席に着く。あれ、そういえばこの時間で学級委員決めるんだっけ。
「では、さっき言った通り学級委員を決めたいと思います。男女一人ずつ選びますが、学級委員になりたい人はいますか?」
誰も手を挙げない、やっぱり積極的に学級委員をやりたいと思う人はいないらしい。
「いなければ学級委員もくじ引きで決めてしまいますが」
先生がそう言うと目の前に座る女の子が手を挙げる。
「先生、私やります」
「あなたは……
誰も手を挙げようとはしない。先生は黒板に加名崎さんの名前を書いていく。
「女子はこれで決まりですが、男子はいませんか?」
男子は誰も上げる気配がない、そもそもクラス四十人中四人しか男子いないし、この学校で学級委員をやりたいと思う男子はいないよね。
「誰もいなさそうですね、それではジャンケンで決めましょうか」
ジャンケンか、こういう時のジャンケン弱いんだよな……。四人が黒板の前に集まる。女子が多いクラスの学級委員なんてなったら絶対大変だ。とてつもない緊張感が漂う。今までの人生で一番緊張するジャンケンかもしれない。
「……」
先生が黒板に御白綾乃と文字を書いていく。うん、何でこんなに大事な場面に弱いんだろうな。自分の勝負弱さを呪いながらも決まってしまったことはしょうがない、できるだけのことはやろうと心に決めた。
少し落ち込みながらも席に戻ると前の席の子、加名崎さんに声を掛けられる。
「御白くん、よろしくね、同じ学級委員として一緒に頑張ろうね」
「こ、こちらこそよろしくね」
いきなり話しかけられて緊張してしまう。加名崎さんに迷惑かけないように頑張らなきゃな。
それから、明日以降の時間割の確認だったり教科書を配られたりしているうちにチャイムが鳴り四時間目の終わりを告げる。
「それじゃあ皆さん、気を付けて帰ってくださいね」
下校の時間、だけど僕は帰れない。職員室に行かなければいけないのだ。
「御白くん、もう職員室行く?」
「うん、早めに行った方がいいだろうし」
「そうだね、職員室の場所分かる?」
「分かんない……」
「じゃあ職員室の場所探さなきゃだね」
僕たちはまだ慣れない学校内を少し迷いながら職員室に向かう。
「あ、神薙さん、あそこが職員室じゃない?」
「ほんとだ、ちょっと分かりづらいところにあるんだね」
「職員室に入るのって緊張するなぁ……」
「私もいるから大丈夫だよ」
「ありがとう……。」
神薙さんはとても頼もしい人なんだな……僕も頑張らなきゃ。
勇気を出して僕は職員室の扉を開ける。
「失礼します」
初めて入る職員室はとても緊張する。まさか高校初日から職員室に入ることになるなんて。
「御白君、こちらです」
先生を探していると名前を呼ばれる。
「神薙さんも一緒だったのですね」
「あの、先生。実は御白くんが遅刻しちゃったのは私のせいなんです」
「もしかして神薙さん、それを説明するために御白君と一緒に来たのですか?」
「はい……」
先生が優しく微笑む。
「それなら心配しなくてもいいですよ、保健の
どれだけ怒られるのかと身構えていたけど、どうやら怒られずに済みそうだ。
「二人とも優しいんですね」
先生はそっと僕たちの頭にそっと手を置いた。
「どうか、その優しさを忘れないでくださいね」
とても暖かい、優しい手だ。
「二人とも、これからの学校生活色々とあると思いますが、何かあれば私を頼ってください。必ず力になります」
真っ直ぐな目、真っ直ぐな言葉がとても安心する……。
「御白君は学級委員になったんでしたね、分からないことがあったらいつでも職員室に来てください」
「はい、ありがとうございます」
「神薙さんは怪我もありますし、気を付けて帰ってくださいね」
「はい、失礼します」
話が終わり僕たちは職員室をあとにした。
「怒られずに済んでよかったね」
「うん、緊張したけど神薙さんのおかげで何とかなったよ、ありがとう」
「どういたしまして、御白くんのお役に立ててよかった」
神薙さんは満面の笑みでそう言ってくれた。本当に優しい人なんだな……。
二人でゆっくりと教室に戻る。少しずつでいい、神薙さんと友達になれたら、そんなことを思っていた。
*
それから学校を出て二人で駅に向かう、神薙さんの足を気遣いながらゆっくりと帰り道を歩いていく。
「「……」」
どうしよう、一緒に帰るって言ったのはいいけど、女子と一緒に帰ったこととかないから何喋っていいのか分からない。沈黙が続いたままだいぶ歩いてきたけどもうすぐ駅着いちゃうし……。仲良くなる前ってどんなこと話せばいいの?この気まずい空気どうすればいいの!?な、何か話題を振らないと……。
「か、神薙さ……ん?」
話しかけようと神薙さんの方を向くと、何故か僕の方を向いて微笑んで見つめられていた。
「どうしたの? もしかして僕の顔になんかついてる?」
「あ、ごめん、御白くんと一緒に帰れるのが嬉しくて」
「僕と一緒に帰れるのが?」
「あ、えっと、その……」
気のせいだろうか、神薙さんの頬が少し赤くなっている気がする。
「御白くんとお友達になりたいなって思ってたから」
あまりの不意打ちにドキっとする。
「あと、その、怪我の手当てしてくれたお礼したかったの!」
「お礼なんていいのに、見返りを求めて助けたわけじゃないし」
「お願い! 私がお礼しないと気が済まないから」
そう言われると断ろうにも断れない。
「御白くんは何か欲しいものとかある? それかしてほしいこととか」
欲しいものか、たくさんありそうなのに言われると出てこない。何かあるかな。
「うーん、何も思い浮かばない……」
友達が欲しいとかはあるけど、今友達になってほしいなんて言う勇気ないしなぁ。
「そっかぁ……」
やばい、神薙さんがシュンとしてる。何か考えないと。
必死に頭を回転させて考えていると、一つだけしてほしいことが思い浮かぶ。
「してほしいことならあるかも」
「ほんと!?」
言うの恥ずかしいけど神薙さんに元気出してほしいし勇気出して言わなきゃ。
「その、明日も神薙さんと一緒に帰りたいなーって……」
神薙さんは少しの間驚いた表情をしていたけど、すぐに満面の笑みになる。
「全然いいよ! 私もまた一緒に帰りたい!」
神薙さんは嬉しそうに言う、何だか僕まで嬉しい気持ちになる。
少し緊張が解けてきたところで気づけば駅についていた。
「じゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
手を振りお互い別の方向の電車に乗る。
今日は色々あったけど、無事に一日が終わってよかった。明日からの生活に期待を抱きながら僕は家路についた。
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