第316話(笑)

 結局、『すいませんでござる。今のは誤送信なり』と間宮へメッセージを送ることにする『組チューバー』の面々。


「田所のあんさん!ホントに何度も言いますけどやっていいことと悪いことがありますからね!」


「すんまそーん」


「田所のあんさん!」


 既読にならないも地獄。既読になるも地獄なたなりんは魂が抜けていた。


「しっかりしろ!たなりん!『祝日のハーレム』の『醜悪だわ』スタンプよりは全然セーフだぞ!」


 宮部も何とかたなりんを励ます。田所へは逆らえない。


「いいですか!人のスマホを勝手に弄ることは犯罪ですよ!プライベートの侵害!もし僕が田所のあんさんのスマホから神内さんや住友さんに『通報しますよ!』スタンプを勝手に送ったらどう思いますか!」


「そ、それは…こまるなり」


「たなりんのモノマネでごまかさない!」


 義弟たなりんの為に心を鬼にして田所に説教をかます飯塚。と、同時に、「送りてえ…。田所のあんさんのスマホから神内さんや住友さんに『通報しますよ!』スタンプ?送ってみてえ…」と思う飯塚。そして。


「あ!既読がついた!」


「マジ!?」


「ちょっと自分にも」


「田所のあんさんは触らない!」


 飯塚にかつてないほど厳しく言われショボーンとなる田所。そして。


「あ!返信が来た!」


「え?」


 びくっと反応するたなりん。飯塚も宮部も興味津々で画面を覗き込む。


『たなりん君。返信ありがとう。なんか最初に変な動画を送ったからたなりん君から返事貰うまでモヤモヤしてたわ(笑)ガラじゃないかな(笑)まあ、あんな動画をいきなり送られたら引くよね。でも俺も自分なりによく考えたし迷ったし悩んだよ。あの人たち(でいいかな?)に財布を取られたのはホントのことだし、俺は何もしてないのに向こうから数にモノを言わせて囲んできたのもホントだしね。本音を言えば俺一人のことなら自分だけで解決して終わってたことだと思う。でも数で囲まれてる時に偶然たなりん君の名前をあの人たちが口にして。最初はビックリしたし、聞き間違いかなとか考えたけど。たなりん君のことを悪く言ってるのを聞いててムカついてきたのは事実だし。そこで丁寧に聞いたらたなりん君のことで間違いないと確信して。そこからは怒りで体が勝手に動いてたわ(笑)人間追い詰められると力を発揮するね(笑)火事場のクソ力ってのかな?(笑)そこから勢いは止まんなくて動画を送った後にちょっと後悔したのも事実で。たなりん君の問題を俺が勝手に相談もせずにめちゃくちゃにしちゃったのかな?とモヤモヤしてました(汗汗)たなりん君はつええから勝手なことしやがってって怒ってるかもとも心配もしてたよ。言い訳はしないしするつもりもありません。だからさっきのスタンプ見た時はすげえ嬉しかったぜ(涙)ごめんな。ありがとな。まあ、俺はこんな感じで不器用な奴だけど(汗汗)それでも大目に見てくれるならマジ嬉しいし。引かれるとキツイかなあー(自分で何言ってるか分かんなくなってきたわ。ごめん!)でも約束通り既読スルーとか即ブロックされなくて嬉しいのが一番かな。また連絡するからたなりん君も何かくだらないことでも気軽に連絡してね!


PS これが俺のお気に入りかな?』


 そしてメッセージの後に横山三国志の登園の誓いスタンプが送られてくる。


「間宮君…、こんな長文のラインを…たなりんに…、うう…」


 たなりんは感激していた。さっきまでの極度の精神不安定な状態から解放された反動もあり。


「たなりん。間宮って野郎は」


 そう言いかけた宮部の肩を掴み飯塚が首を横に振る。




「俺はよええから『これ』使わせてもらうわ。いいだろ。江戸川先輩」


 慈道が特殊警棒を手にする。


「好きにせえや。なんならドス貸したろうか?」


「いや。いい。俺はこれ『専門』なんで」


『道具を使うものは道具に頼る』


 九代目『藻府藻府』頭・京山からの教え。道具の使い方から道具相手のやり方も叩き込まれている江戸川。京山の言葉には続きがあった。


 慈道が右手に持った特殊警棒で江戸川へ襲い掛かる。右手の軌道を見ながら特殊警棒をかわす動きを見せる江戸川。


 ズンッ!


 包帯スカーフェイス状態の江戸川の顔面に慈道の左拳がめり込む。そして攻撃をもろに食らった江戸川が吹っ飛び倒れ込む。京山の言葉の続き。


『道具を使うものが道具に頼らない時は厄介』


 慈道は道具に頼らないケンカ屋だった。

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