第297話1―1で最初にやられるくりぼう
(うう…。憂鬱なりね…)
たなりんはイジメられると分かっていながら学校へ通う。本当なら学校は休んで全部家で済ませたかった。ネット環境のある今の時代、学校へ行く意味って学歴作りの為だけだと考えていた。でも不登校とかしちゃうと両親に心配をかけてしまう。
(うう…。SNSとかで社会人の人が『会社行きたくねえ―』とか『ニート勝ち組!』とか言ってるのって下手したら社会に出てもイジメはあるのなりか…)
本気でそう思ってしまう。
(でも『組チューバー』かあ…。宮部っちも『族チューバー』。ならたなりんは『Vチューバー』なりね…。ゲーム動画に分かりやすいパッチの当て方動画、RINATAN0721はちょっとしたカリスマ!eスポーツに転移してプロになるのもいいでござる。所詮、学校の馬鹿どもは未来に希望のないその他大勢のモブ。村人A。1―1で最初にやられるくりぼう)
ちなみに未だにお守り代わりの藻府藻府特攻服宮部とのツーショット画像は誰にも見せてない。それを見せて「たなりんはあの『藻府藻府』とツレなりよ!」というのも友情を利用しているようでなんか違うと思っているから。
「おう。まるお」
教室で声を掛けてくる集団。集団と言っても三人。
「…」
「今日、まるおって弁当?」
「…うん」
ここで弁当ではなく学食か購買でパンを買うとか言うと決まって言われる。「じゃあお金持ってんだあ。ちょうだい」と。
「んだよ。弁当かよ。ぺっ」
「バイトしろ。まるおー」
他のクラスメイトに見られないよう仲間内で壁を作り、たなりんの顔に唾を吐きかけていく。
(…。本当は弁当じゃないなり…。ママンに交渉してたなりんは毎日昼食代千円貰ってるなり。パパンの月のお小遣いは二万円と聞いてるなり。その貴重なお金をこんなクソみたいな村人A、アメリカのホラー映画とかでキャンプ場に調子ぶっこいて集団でいって最初に殺人鬼に殺されるエキストラが。せいぜい殺されるまで楽しんでろクソが!)
そして放課後を待ち、宮部へとラインを送る。
『学校終わったなりよ。長谷部っちのお見舞いに行くでござる。長谷部っちはいける口なので『すかいりぶ』の初期版のソフト(パッケージ版)を持っていくでござる』
『何!?たなりん、『すかいりぶ』のパッケージ初期版持ってるの!?コードは安く買えるよな!長谷部に渡す前に俺に一日だけ貸してくれえ!インストールしたらすぐに返すから!』
(ふふふ。まあそう反応するなりよね。当然なり。『すかいりぶ』の初期版は今や『すちーる』でも入手不可能。でもMODは初期版の方が数が圧倒的に豊富!これさえあれば最初に打ちこむコードは安く入手出来ますからねえ。くっくっくっく)
「おい。まるお」
たなりんの大事な、そして宮部が『一日だけ貸してくれえ!』と熱望した、そして長谷部に貸す予定だった『すかいりぶ』のパッケージ初期版に魔の手が…!
角田を残し、一人で『肉球会』の事務所を後にする世良兄。日も暮れかけてきた中、携帯を鳴らす。
「はい。池田です」
「おう。俺だ。これから車回してくれるか」
「分かりました。今どちらですか?」
「『肉球会』の事務所近くのスーパーの駐車場にいる」
「すぐ行きます。今からなら十五分で着きます」
「十分で来い」
「分かりました!」
そして十分で現れる池田。池田が運転する車の後部シートに乗り込む世良兄。
「瀬和さん。それでこれからどちらへ」
「○○市に向かってくれ。高速使えば一時間ちょいでつくとナビには出てたが」
「分かりました」
「今日は人と会うんでアルコールを飲むと思う。だからお前に運転を頼んだ」
「そうなんですか。懐かしいですね。瀬和さんの運転をするのは」
「そうか」
そう言いながらタバコを取り出して咥える世良兄。池田の車だろうが、灰皿を確認してなかろうが関係ない。池田も文句は言わない。本当なら一人で行こうと考えていた。ただ、池田にも言ったように酒を飲むだろう。小泉のお膝元でホテルをとるのも今は避けたい。まあ向こうが用意してたら断るのも難儀だとも考えていた。
「向こうに着けば自分は待機ですかね?」
「ああ。日帰りで帰りたいんでな」
「分かりました」
池田が運転するプリウスが高速道路へと上っていく。
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