第283話君の弱さ
「たなりいいいいいいいいん!」
飯塚と田所が現場に到着し、たなりんの無事を確認する。
「うおおおお!たなりん君!無事だったかあ!」
「飯塚さん…、田所さん…」
そして義経の存在に気付く飯塚。
「あれ?世良さん、ですよね…?」
義経も飯塚に気付く。
「あれえ、飯塚さんじゃないですか。あ、本当だ。『藻府藻府』の特攻服。いやあ、それよりたなりんですよー。つええつええ。あと一人になりましたが、あの新藤君がやってる相手、あれの仲間の一人を瞬殺でしたからね」
「え!?たなりんが!?」
「そうです。まあ、悪あがきのとどめは僕がやっときましたが。それでもほぼ無傷でやっちまいましたからね。なあ、たなりん」
「ま、まあ、そうなりね」
「(マジっぽいっすね。飯塚ちゃん)」
「(え?『藻府藻府』が的にかけてるのって二人だったような。今、宮部っちの足元で倒れてるのがそうでしょ。で、新藤君が今戦ってる相手、あの金八先生…、あ!バス停をひん曲げて冴羽君が敗けちゃったあの…。でも新藤君はいい勝負してる…。さすが『藻府藻府』ナンバーツー!)」
「二人ともお疲れ様です。今は新藤のタイマンを見届けましょう。世良、お前も余計な手出しはすんじゃねえよ」
「はいはい。宮部君には逆らいませんよ。僕も顔を削られたくねえからね」
え?顔を削った!?宮部っちいいいいいいいいいい!放送出来ないよおおおおおおおおお!と思う飯塚。と、同時に、宮部っち恐るべし…とも思う飯塚。そして新藤と天草のタイマン勝負を見つめつつ、隠しカメラでしっかり動画は撮影する田所と飯塚。
「ん?新藤君は最初に会った時より強くなってますね」
田所がタイマンを見ながら呟く。とにかく怪力天草に掴まれないよう動く新藤。新藤は天草を『九代目現役時代の藻府藻府天草』とイメージして戦っていた。エンジニアも木刀も仕込んでるだろうしメリケンも三原は握っていた。それに気をつければサシのケンカなら自分の方が上と思いながら。新藤の背には自信が。比留間もサシで倒した。軍紀にも負けなかった。そしてあの京山から気合を入れてもらった。負けるわけがねえ。負けらんねえ。無駄な動きは一切しない。余計な攻撃もしない。ただ一発一発が核弾頭のようなダメージを。天草をそれで削っていく。天草が舐めていい相手だとは一ミリも思っていない。そして。
「さっさと死ねや!」
天草の大振りのハイキックを見極め天草の懐へ入る。すかさず天草のロン毛を両手で掴み思い切り腕を下げる。そこに膝を合わせる。顔面への膝蹴り。二発目、三発目、四発目。ここぞと判断し顔面への膝を連発する。
「こ!ぐっ!ガキがぁ!」
両腕で必死に顔面をガードしていた天草が右手を素早く後ろに回しエモノを持つ。木刀ではなく光る刀身。宮部が叫ぶ。
「新藤ぉ!ドスだ!」
宮部の叫びよりも一瞬早く天草の狂気が躊躇いなく新藤の懐を襲う。
ザクッ。
新藤のわき腹に刺さったドス。天草が笑いながら言う。
「はっはー!ガキがァ!さっさと死ねやあ!」
そして新藤が一言。
「だからおめえはよええんだよおおお!」
さらにスピードを上げて天草の顔面への膝!膝!膝!天草の鼻が曲がる。歯が飛ぶ。顔面が陥没するかの如く凄まじい新藤のラッシュ。そして掴んだ天草の髪の毛がブチブチと切れる。最後の膝を入れた瞬間両手を離してやる。軽く宙に浮く天草が無防備な状態で時間が一瞬止まる。そこを新藤が渾身の右ストレート一発で決める。
「新藤ぉ!」
「新藤君!大丈夫!?わき腹!」
「あ、大丈夫っす。『これ』っす」
そう言いながら、ドスを抜きながら新藤が特攻服の下から週刊じゃんぷを取り出す。
「なんだよ。週刊かよぉ。お前。月刊にしとけって俺は言ったろ」
「わりい。これしか落ちてなかったんでよぉ」
飯塚が新藤に駆け寄ろうとするがそれを宮部が遮る。
「まだっすよ。飯塚さん。これからです」
「え?でも勝負は決まりでしょ?」
「いいえ。こいつらは徹底的に殺してやらねえと自分の負けが分からねえ連中です。ここで徹底的に殺っちまわないと何回でも来ますよ」
そして新藤もその言葉通り倒れ込んでいる天草の顔から体中へ容赦のないエンジニアでの蹴りを繰り返す。たなりんどころか飯塚も直視出来ないほどの攻撃。それでも終わらない。江戸川が投げた折れた木刀を拾い上げ、それを躊躇うことなく天草の太腿へと直角に振り下ろす。
ザクッ!
「んぐあああああああああああ!」
「てめえ声がでけえよ」
もう片方の太腿へ週刊じゃんぷに刺さっていたドスを振り下ろす。
ぐさっ。
「うんぐっ!」
「おら、さっさと降参しねえと終わんねえぜ。次ぁ顔面削っとくか」
「…ば、ば、ばんべんびでぶだだい…」
「あ?日本語喋れよ」
そう言って天草の髪の毛を両手で掴み思い切りぶん回す新藤。
ブチブチブチブチ!
切れる天草の髪の毛。そしてジャイアントスイング髪の毛ヴァージョンで宙を舞う天草。
「おい。新藤。もういいだろ。お前の勝ちだ」
宮部がさらに攻撃を加えようとする新藤の肩を止める。
「おす」
「間宮君が危険すぎるってどういうこっちゃ」
「言葉通りです。こいつは何でも食っちまう」
顔を背け、クククと笑う間宮。ここで世良兄が小泉好みの言葉を放つ。
「こいつがいくら積んだのかは分かりません。それより上の金額を自分が積みましょう。どうです」
若くして金を掴んだこの街の顔役である世良兄が弟に行った言葉をそのまま行動で見せる。
『暴力がものを言うのは学生までだ』を。
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