第264話なら

「世良さんはどこまで」


「さあ、どこまででしょう。少なくとも『ああいった動画』は保管するなら個人レベル、少なくともネット回線が繋がっていない環境が基本でしょう。あくまでも『自分なら』そうするってことです。中山って小僧の言葉がほんとうのことならですが。あくまでもこっちで裏も取ってます」


「コンピューターにお詳しそうですが」


「コンピューター云々の前に『自分なら』そうするって考えです」


 七・三に分けた田所の頭を見ても何の反応も示さず世良兄が淡々と続ける。


「『模索模索』の連中が撮っている『動画』。いわゆる『逆盗撮』ものですかね。そこまでエグくはありませんがうちも似たようなもので『客』に鎖をつけることもあります。『本番強要』や『盗撮』の多い業界ですので。『お客様は神様です』ってのは綺麗に遊んでくれる客のことであり」


「…世良さん。まさか世良さんの店でも…」


「そこまで下品なことはしませんよ。うちは『個人データ』をスマホから抜き出して終わりです」


「『個人データ』ですか」


「ええ。『動画』まで取らなくとも『個人データ』を抜き取り少し叱ってやれば言いなりになります。半グレ連中は相当な金を強請ってるようです。単純に計算して。三百万なら十人からで三千万です。これはあくまで『自分なら』そうするって話です。ランク付けでしょう」


 世良兄が間宮率いる『模索模索』を暴いていく。


「ランク付け…とは。まさか…」


「まさかとは言いません。あくまで『自分なら』そうするって話です。ブイの世界に知り合いがいまして。『動画』ってやつはかなりいろいろあるそうです。『管理しきれる動画』は無理ってことです」


「それはつまり…」


「連中が話を持ちかけてる時点で『遅かれ早かれ』ってものかと。ただあの手の『動画』は『二つ』の問題をクリアしないと意味がないかと。一つは『男女セット』であること。野郎だけのものを誰が好き好んで見るかってことです。もう一つは『無修正』であること。ただこれを両方クリアするってのはかなり難しいそうです。『えふしーつー』ってサイトをご存じですか?」


「名前は聞いたことありますね。逮捕者も出ている動画配信サイトでしょうか」


「そうです。今はあそこで稼いでいる人間も少なくないんです。『やる気のある女優と抜群のカメラワーク』。これがないとと思ってます」


「それは…つまり、カマをかけられてると」


「誰でも『後ろめたさ』のある状況で『自分が主演』している作品の一部を見せられたらパニクルのが人間かと。そしてしっかりと作られたものへ金を払ってみる世界です。その問題となってる動画。すべてをチェックされましたか?」


「いえ、個人のプライバシーもありますので。チラッとしか…」


「『自分なら』まずすべての動画をチェックします。『使える』『使えない』の判断基準は簡単です。よく出来た作品であるかどうか。ただそこまで『運命共同体』になるような『女』ってそういないと思いますが。これが『女』も知らなかったなら大問題になるとも思いますが」


 世良兄の悪魔的分析力に頭の中が圧倒される田所。


「もしもですが…、世良さん。『女』もグルでしたら…。あいつらは『女』も言いなりにしてきたのが現実です」


「言いなりですか。それってかなり難しいと思いますし無理があると思います。『男』強請るより『女』強請った方が金になると思いますし。あくまでも『自分なら』の考えで憶測ですが」


 クールな第三者である世良兄が独自の見解を披露していく。

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