第260話朝マック
「間宮さん」
半グレの一人に起こされる間宮。
「ん?寝みい。何?」
「三原さんがお見えになりました」
「あ?なんで『さん』付けで敬語なんだよ」
「いえ!あのお…」
「人を呼びつけといておめえは居眠りかよ。いいご身分だな。お」
事務所に呼び出された三原が間宮へ言う。
「寝みい…。あと五分。お前もそこのソファーで寝てていいからよお」
「ざけんな。用がねえなら帰るぜ。こっちは『藻府藻府』のクソどもを全殺しにしなきゃあいけねえんだからよお。言っとくがおりゃあおめえの下でもなんでもねーからよ」
そこで先ほどの二本目のレッブルを開け、口をつける間宮。
「あ?なんだそりゃ。俺は誰の上でもねえよ。あ、下は多いかなあ」
「何言ってんだ。おめえまたラリッてんじゃのか」
三原の言葉に間宮のこめかみが反応する。その瞬間。
「間宮くーん。お待たせー。マジ急いで来たんで」
「ち、世良かよ…」
「あれ?三原だっけ。こいつもメシに行くの?」
「あ?てめえ誰を呼び捨てにしてんだ、ああ?」
「あ、ごめんごめん。三原パイセンでいいっすか」
「てめえ!」
「寝みい。五分でやれる?世良ぁ」
「え?五分でやれるって。こいつ?そりゃあ失礼だよお。間宮君。五分どころか三日起きれなくなっちゃうよ。彼」
「ほざいてんじゃねえ!」
ドン!
「座れや。二人とも」
机を思い切り叩いた間宮の声で世良をぶん殴ろうとした三原もそれを迎え撃とうとしていた世良も動きを止める。そしてソファーへ移動し腰を下ろす。間宮も二人の対面へとタバコを咥えて火を点けながらレッブル片手に移動する。
「三原。まずお前。一人だと話にならねえな」
「あ?」
「情報が遅すぎる。無様さらしといてなんだ。知らなかったってよお」
「え?三原パイセン。あのSNSに出回ってる動画知らなかったんすかあ?てか、見事なやられっぷりでしたっすねえ。あんな大技食らうなんて『やらせ』ですよね。あれ」
「ちっ…。二対一だったんだよ。奇襲で」
「え?ガチなんすか?あの動画。『やらせ』じゃなくて。嘘でしょ」
「んだてめえ!」
「やめろ。おい、レッブル二本持ってきてくれる」
「はい」
間宮に言われレッブルを取りにいく半グレ。間宮が続ける。
「そんな筋肉バカなら江戸川がボコられたのも知らねえだろ」
「あ?江戸川が。あのバカ。相手は『藻府藻府』か?」
「他に誰がやる。パチ屋でのんきかまして宮部に顔面修羅場だってよ。天草は…。世良」
「え?ああ、俺がやっちまったよ。でも途中であいつ逃げちゃったから。正確にはまだ途中?」
天草が世良に敗けた?途中で逃げた?信じられない思いにかられる三原。
「てことだ。三原。お前じゃ世良に勝てねえよ」
そこでレッブル二本を運んでくる半グレ。それを間宮に手渡す。
「お、わりいな。ほら、飲むだろ」
そう言って受け取った二本のレッブルの一本を世良へと軽く投げる。そしてもう一本は自分で飲む間宮。
「あ、サンキュー。間宮君」
「…間宮」
「あ?お前も飲みたかったの?だった言えよ。ほら、俺の飲みさしならあるぜ。ほら」
そう言いながら眠る前に受け取ったぬるいレッブルに痰を入れる間宮。
カー、ペッ。『藻府藻府』名物『ロシアンレッブルルーレット』である。
「いらねえ」
鬼の形相で間宮を睨みながら三原が答える。そして続ける。
「なんで世良と天草がぶつかんだよ」
「あ?お前大丈夫か。気に入らねえ、目が合った、肩がぶつかったでぶん殴るのが俺らの世界じゃねえの。こりゃ命令でもなんでもねえがよ。天草と江戸川に言っとけ。忍が飛んだ。今あそこを仕切ってるのは忍の下だった今田って奴だ。キャンキャン吠えるのもいいがよ。力でそれを見せてくれよ。三原ぁ」
「三原パイセン。メモとか取らなくて大丈夫っすか?今田って名前っすよ。暇だじゃないっすよ」
「るせえ!」
そう言って立ち上がり怒りを抑えながらその場から立ち去る三原。
「あいつ大丈夫かねえ。間宮君」
「さあな。ただのケンカ屋もいいがあいつはケンカ屋にもなれねえ。それより向こうで面白い奴と出会ったぜ。慈道つってな。サシでステゴロタイマンってのを久しぶりにやったわ」
「え?マジで。慈道君っていうの。へえー」
「ま、いいや。眠気も冷めちまった。メシ行こうぜ」
「うん。俺も面白い奴と出会ってさあ」
「へえ。とりあえず外に出ようや。マックの気分かな。朝マックって何時まで」
間宮と世良義経が久しぶりに二人きりでメシを食う。
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