第225話段ボールとマジック

 両足太ももを拳銃で打ち抜かれた『殺される覚悟』を持たぬ忍は住友の質問に躊躇することなく答えていく。住友もポンポイントで忍にうたわせる。


「組織の構成はどうなっとる」


「い、一応形だけは、はあ…、解散してますが…、はあはあ…、頭は間宮って人間が…、はあ…、まとめてます…」


「構成人数は」


「それは…、はあ、本当に分かりません…。はあはあ…、実際に自分みたいな、はあ…、名前もある幹部は…、五人です…」


「その間宮って小僧と五人の幹部のフルネーム」


「間宮は徹です。はあ、あとは自分が中山…忍です…。それから福岡軍紀、比留間勲…、鹿島雄二…世良義経…です。はあ…はあ」


「兵隊の数は。つっても末端は犯罪に加担してるのも自覚しとらんものも多いやろう」


「はい…、はあ…」


「『蜜気魔薄組』と列組んでんのは分かっとる。改めて小僧の口から聞きてえ。あそことはどんな関係や」


「…本職のヤクザは暴対法や…はあ、使用者責任で今は稼げないって…はあ、聞いてます…。それで実行部隊を…、法に問われない自分らで…」


「その見返りは」


「こ、これは…間宮から聞いてることですが…、はあ、はあ、はあ、対等以上の関係…、表向きにシマを…仕切ってるのは、はあ、『蜜気魔薄組』にして…、実際には間宮が…仕切ること…はあ、です…」


「『蜜気魔薄組』の前の組長若林を殺したのは誰や」


「…はあ、はあ…、それは本当に知りません…」


 パキューン。


「ぐっ!ううううう…」


 忍の右足太ももをためらうことなく撃つ住友。


「知りませんは答えになってねえんだよ」


 忍が痛みを食いしばって絞り出す。


「殺ったのはうちの誰かなのは間違いないと思います…。伊勢さんとは…はあはあ、間宮しか直でのやり取りは出来ませんので…」


「伊勢さんとは今の『蜜気魔薄組』組長の伊勢のことやな」


「はい…」


「さっきの話に戻る。お前らが弱みを握ってる人たちのネタは誰が管理しとる」


「それは…、すべて間宮の元に…はあ、ありますが…。はあはあ。動画データなんで…。幹部らも…それぞれ持たされてます…。はあ、はあ…」


「間宮と幹部、その六人以外に漏れることは」


「…漏れてます…。それぞれの…、幹部が…はあ、はあ、集金係を作り…、信用できる人間に…、それをやらせてます…。それぞれの…担当が…、コンタクトから交渉…、金額の設定、回収まで…を、はあ、担当してますんで…。今は…、数を増やすことを第一に考えて…やってますんで…、はあ、下からの上納って形で…集金係専門の人間が…新しい弱みをどんどんとってきてますんで…はあ…。中には黙って小銭を稼いでいる奴も…はあ…いると聞いてます…」


「とりあえずお前が知ってるもん、持ってるもん、ありかも全部言え。出せ」


「はい…」


 そして事務所の机の中と自分の財布の中にマイクロSDカードが数枚入っていると言う忍。


「あ…!かしら!こいつの財布はここに来る途中道端に捨てました」


 慌てて口を出す京山。住友は一切動じない。


「そうか。それでお前のは全部やな」


「自分が…はあはあ…、知る限りのものは…全部です…」


「そうか。じゃあ出来ることからや。お前の事務所の住所、建物名から全部言え。鍵は勿論持っとるやろうな」


「…京山さんに財布と一緒に先ほど…、すべて出してます…はあ」


「かしら!すいません!俺は今からダッシュで取りに行きますんで」


「安心せえ。健司。お前が捨てた袋は回収しとる。それよりここからや。小僧。ええ感じで半裸やのお。でも血が邪魔や。裸になれ」


 住友の拳銃が忍を言いなりにする。


「はい…」


 そして京山に一階から何か段ボールとマジックみたいなものがあれば持ってくるよう言う住友。ここで忍は本当の意味での『目には目を歯には歯を年賀状には年賀状を』の言葉を知ることとなる。

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