第180話からかいJAWS
「暴れに来てるってえのにこういう時に限って平和だよなあ」
「しょうがねえじゃん。俺らのナリ考えりゃあねえ。トップクでも着てりゃあいやでも目立つんじゃね」
「トップクねえ」
咥えタバコで街を歩く間宮と宮部。
「三原らはなんて?」
「まだ『ボウズ』みてえ。ちっと電話」
そう言って間宮が携帯を取り出す。数コールで相手と繋がる。
「お、どうした?」
「伊勢さん。ちょっと聞きたいことがあるんすけど」
電話の相手は『蜜気魔薄組』現組長・伊勢。
「おう。『遠征』してるらしいじゃねえか」
「…それ、誰に聞きました?」
「そんなの誰だっていいだろ。わしら情報で食うとる。それよりなんだ。聞きてえことってよお」
「『身二舞鵜須組』の〇〇って知ってます?」
「あ?〇〇?おお…、確かそう言う名前の若いのがおるが。それが?」
間宮の頭の中には先ほどの男のスマホから抜き取ったデータがインプットされている。電話しながらも江戸川と張り詰めた空気を途切らせず周りへの警戒を怠らずに会話を続ける。
「こっちでさっきぼったくりバーすかね。そこの連中を締め上げたんすが。そのうちの一人のスマホからいろいろ出てきまして。『身二舞鵜須組』の〇〇ってえのとつるんで『薬』扱ってるみたいっすね」
「その話ホントか」
「ええ。言い逃れ出来ないよう証拠は取ってますんで」
「ほお…」
そこで歩みを止める間宮と江戸川。
「ちょっと野暮用っす。切りますね」
そう言いながら前方からゆっくり近づいてくるブランドっぽいジャージを着た二人の男へと視線を送りつつ携帯をポケットにしまい込む。前の二人への警戒を解かずに顔を少しだけ横に向け後ろにも確認の視線を送る。顔を横に向け前後両方に視線を送る感覚。
「江戸川」
「ああ。つええぞ。ビンゴやね」
そして対峙する。
「おう。兄ちゃんら見ねえ顔だな。なんかおもろいことしてんるんやって?」
「いえ。つまんねえとこなんでもう帰ろうかって相談してたんすよ」
「おう?ガキが」
「ガキに何か用っすか?」
「ガキとケンカなんか出来るか。まあ、ちとお世話になっとる人の店がなあ。タタキにおうて相談されてなあ。これから『ごめんなさい』しにいこか」
「タタキって何すか?お兄さんらのお世話になってる人ってマボロシでも見たんじゃねえっすか?」
「虚勢張るんはええが足が震えとるぞ。お」
間宮と江戸川の脳内はタイミングを計っている。ケンカはすでに始まっている。初手をどのタイミングで。こういう時、京山仕込みの合図があった。複数人対複数人で掛け合いから初手を取る合図。間宮が張り詰めた緊張を一瞬解き、顎を少し上げながら目を少し広げながら相手の後方に視線をやる。すると相手の誰かしらがその視線に引っかかり後ろを振り向く。隙が出来た相手目掛けて二人がかりで襲い掛かる。確実に初手を取る京山仕込みの技である。
ジャージの片割れ、すごんでいた方が一瞬隙を見せる。そこへ間宮の拳と江戸川のエンジニアでの蹴りが繰り出される。
「田所のあんさん」
「はいな。飯塚ちゃん」
「拳銃って撃ったことあるんですか?」
「いきなり何を聞くんすかあー」
「いえ…。ちょっと興味が…」
「あるっすよ」
ああ、やっぱり…、でも意外…と思う飯塚。
「やっぱり…誰かを…」
「いえ、練習で撃ったぐらいっすね。実戦ではほとんど使わないっすよ。まあ、おやじの教えでもありますし。飯塚ちゃん。拳銃ってほとんど当たんないっすよ」
「え?そうなんですか?」
「止まってるターゲットなら一メートルとかのレベルならっすね。本当に確実にって時は相手に銃口をくっつけるぐらいのレベルじゃなきゃあ当たりませんから。動いてる相手だと二メートルでもキツイっすよ」
「へえー」
「流れ弾のこともありますし。堅気さんに当たるリスクが一ミリでもある時はダメって決まりでしたね。上手いやつは上手いっすが。それでも両手で構えてしっかり狙って、まあ片手でも銃口が微妙に揺れますんで。外国の傭兵レベルの教育でも数年かかるんじゃないっすか。なんせオリンピックの種目になるぐらいっすからね」
ああ、確かに『クレーン射撃』とかあるもんなあ、と思う飯塚。
「でも『動くな!』とか言われたらホールドアップじゃないですか?」
「うーん、どうでしょ?ただ機関銃みたいなのは別として。チャカはまさに頭や急所に当たればヤバいって感じっすかねえ。基本、目と銃口の先端の目印とターゲットを線にするイメージっすね。だから肩に顔を固定しながら腕を伸ばして連射してくる奴はホントに動きながら隠れないとっす。あと跳弾って言って固いところに当たって弾が反射する時もありますからね。使う時は確実に当てられる時、狙われたら不意打ちや狙い撃ちされたらヤバいとかあとは銃声っすね。デコが来ますから。健司がボーガン食らいましたがあっちの方がいろいろ便利っちゃあ便利っすね」
間宮の放った拳は隙を見せなかった方のジャージが片手で受け止める。江戸川の蹴りはもう一人のジャージを捉えるも腕に持ったポーチで受け止められる。
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