第174話俺ら、縄文時代ならとっくに死んでる

「よー、間宮ぁー」


「ん?」


「俺ら連れてこんな街に来て何すんだよ」


 間宮と元『藻府藻府』メンバーである三人が『身二舞鵜須組』が仕切る街を歩きながら話す。三人は忍や軍紀と違い、京山が『藻府藻府』を引退した時にチームを辞めた。京山のいない『藻府藻府』に残る意味がないと去った人間である。三原、江戸川、天草。カリスマ京山に挑み、魅せられた信者である。


「ここらはあの『血湯血湯会』の三次団体『身二舞鵜須組』のシマなんだよ」


「あ?なんだ『三次団体』って。おりゃあそっちの世界のこと詳しくねえんでよ」


 リーゼントでタバコを咥えた三原が言う。


「そうそう。それにこの辺に有名な不良もいねえだろ。それより宮部らをシメる方がよかったぜ。忍や軍紀がいいとこどりかよ」


 パンチパーマの江戸川。


「間宮が言ってた目標の足掛かりじゃねえの」


 ロン毛の天草。


「つええ奴なんかお前らが知らないだけでいくらでもいるんじゃね?とりあえずこの辺を俺らで獲るからよ。お前ら『三国志』のゲームやったことある?」


「あ?ガキじゃねえんだし。ゲームなんか知らねえよ」


 江戸川の言葉に三原と天草が反応する。


「え?マジで?お前『三国志』やったことねえの?」


「うわあ…。初めて見たわ。『三国志』やったことねえ奴…」


 そこで間宮が言う。


「わりいわりい。江戸川。俺の言い方が悪かったわ。『信長の野望』ならやったことあんじゃねえの?」


「あ?なんだそりゃ」


 江戸川の言葉にそれぞれが『あちゃー…』との表情を浮かべる。


「江戸川。俺の言い方が悪かった。『国盗り合戦』だ。いま日本各地をそれぞれ地元の自称『俺TUEEE』な連中が仕切ってると考えろ。まあ、俺らの色を『赤』としよう。『藻府藻府』の色を『青』と考えろ。京山さんの威光でまあ俺らの地元からこの辺りまで『青』だろう。全国を見れば他にもたくさんの色があるのは分かるだろ。それをすべて『赤』にする。それが俺らの仕事。分かる?」


「京山さんが現役辞めなかったら今頃全国が『青』になってたんだろうなあ」


「つうかよ。宮部じゃ終わりだろ。あいつらはそういうのに興味ねえだろうし」


 三原が口に咥えていたタバコをそのまま吐き捨てながら言う。


「でも、お前ら三人は俺の『考え』に乗ったからここにいんだろ?」


「まあな。族を辞めてから退屈でよお」


「いろいろ『スカウト』はあったけどな」


 元『藻府藻府』の肩書があれば裏社会から自然と声はかかる。


「で、間宮よ。その『赤』に染めるって話だけどよ。『肉球会』や『血湯血湯会』も『赤』にするんだよな?」


「当たり前だろ。お前らも『自分より弱い奴をアニキって呼べねえ』人間だろ?俺らでこの国を『赤』に染めてよ。その時に京山さんにまた俺らの頭になってもらうんだよ」


「最高じゃねえか」


「お前らさあ。京山さんの言葉覚えてる?俺らもう十七、十八じゃねえ?」


「ああ。覚えてるぜ。『俺ら、縄文時代ならとっくに死んでる』だろ?」


 縄文時代の平均寿命は十五歳と言われている。

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