第155話『ヤクザ』だとか『堅気』だとか『ウヒ』だとか。
「アニキ。どうしたんですか?しかもそのカッコ」
「いや、くみちゅ…」
「ちゃんばわんばだ!」
とにかく『組チューバー』の存在を知られるとまずいと思い似たようなボキャブラリーを叫ぶ飯塚。
「ああ?なんだてめえら。『アニキ』つったよな。お前らもヤー公か」
「だから、くみちゅ…」
「くみんちゅだ!もりくみこさん非公認だがな!」
ちなみに田所と飯塚は『撮り鉄部』のようなカメラを首からぶら下げている。
「ああ?意味分かんねえよ。とりあえず外でようか。変な兄ちゃんらもなあ」
そこで山田が田所に小声で言う。
「(アニキ。お久しぶりです。それよりマジでどうしてここへ?)」
「(健司から連絡があってよ。挨拶はあとあと。あいつらは俺らがやるから。お前は見てろ。あ、あと…、この『カメラ』ちょっと持っててくれる?首にかけてな)」
「(は、はあ…)」
そして店の外にでる迷惑客三人と田所と飯塚と山田。
「兄ちゃんたち。払うもんは払ったんだからこのまま大人しく帰るか。その方がええぞ。それより、もうちっと『ああいうお店』での飲み方ちゅうのを勉強した方がええんちゃうか」
「あ?外に出ろつったのはそっちの兄ちゃんだぜ。『反社』の。そっちこそヤー公が『堅気』に手を出すとどうなるか知ってんのか?言葉はよーく選んだ方がええんちゃいますか」
「『ヤクザ』だとか『堅気』だとか。その前にお前らは何なんだ。男じゃねえのか」
「おー、ヤーさんなら名刺出したらアウトなんだよなあ。名刺見せてよー。名刺ぃー」
「そりゃええわー!名刺出せやぁ!名刺ぃー!組の代紋とか入ってんだよなあー!ああ?」
極道相手に粋がる迷惑客三人組。やくざ者の怖さを分かっていない、想像力が欠けた若者たちである。田所が一人で立ちはだかる。
「わりいけど俺は『堅気』だからよ。あと『名刺』も持ってねえんだわ。すまんこってす」
「あ?何言っちゃってんの?てめえもすっとろい『牛』か?『豚』か?おもしれえ髪型しやがってよお」
思わず一緒に笑ってしまいそうになる山田も神内の教えを思い出し何とか笑うのを我慢する。そして田所の7・3分けのパンチパーマを掴み左右に揺らす迷惑客の一人。あちゃあ…やっちゃったよ…、知りませんよ、でも面白くなりそうだからいいぞ!いいぞ!と思う飯塚。そして。
「兄ちゃんよお。そんなにおもしれえか…?」
田所の髪を掴んでいる男の腕を掴みながら田所が言う。
「おお!最高だわ!十年後に流行りそうやなあ!流行先取りのおっさんよお!」
そう言いながら田所に腕を掴まれた男がもう片方の腕で田所の顔面目掛けて拳を放つ。それを片手で受け止める田所。そこから迷惑客三人を瞬殺する田所。
「あああああああああああああ!?『牛』だあ?『豚』だあ?おりゃあ『ウヒ』つったんだよおおおおおおおおおお!知らねえのかああああああ!?『ウヒ』だよおおおおおおおおお!『ウヒ』…、『ウヒ』…、『ウヒ』がいるっていったんだよおおおおおおおおおおおお!」
「いてえ!」
「勘弁してください!」
「すいませんでしたあ!」
それでも『鞭打ち』をやめない田所。
「お前らがああああああああああ!泣くまでええええええええええええええ!殴るのを止めないッ!」
その光景を見ながら神内さんの教えは…、『それ』系が多いなあと思う飯塚。そして。
「泣いてます!すいませんでしたあ!」
「泣いてますから!いてえ!」
「いてえ!いてえ!泣いてますんで!」
ようやく『鞭打ち』を止める田所。そして言う。
「兄ちゃんたち。どこのもんや?」
「いえ。ただの大学生です」
「せいがくか?」
「は…、はい…」
「青春学園か。あそこて大学あんのか?」
「はい?」
「手塚ゾーンは見たことあんのか?」
「はい?」
「田所のあんさん…。そいつらただの大学生みたいです。その辺でいいんじゃないですか?」
「飯塚ちゃんがそう言うなら…。学もそれでええか?」
「はい。飯塚さんがそうおっしゃるならそれで納めましょう」
「おう?お前ら!飯塚ちゃんに感謝しろよ!『飯塚さん、ありがとう。いー薬です』って百回言って帰れ」
へ?と思う飯塚。あのCMの?とも思う飯塚。と、同時に、『撮れ高』ぁ!と思う飯塚。実は『撮り鉄部』のような首から下げた一眼レフカメラのようなカメラは『動画撮影カメラ』であった。一部始終を動画としてゲットする『組チューバー』。そこから話はどんどん展開を見せる。
「あ、こいつは『模索模索』のメンバーですね。間違いないです」
「そうですね。覚えてますよ。うちを襲撃してきた時にいましたね。『藻府藻府』が割られた時にいましたよ。こいつもです。それにしてもこの動画はよく撮れてますねえ」
田所、京山、宮部のラインで迷惑客三人が『模索模索』メンバーであることが確認される。
「おやじ」
「なんや。学よ」
「おやじは『暴対法』対策も兼ねて田所のアニキを…」
「いや。あいつなら損な役をまっとうしてくれるやろうと思ったからや。それより裕木の件もあったからなあ…。しばらく少年野球のコーチも自粛した方がええなあ。残念やが…」
地元少年野球チーム(強豪)『ニャンキース』の臨時コーチを神内は長きにわたって務めていた。
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