第91話『片方の鼻の穴に指を突っ込むと誰でもユーミンさんのモノマネが簡単そっくりに出来る』
前回同様、部屋に乗り込もうとするが前回と違って愛子ちゃんがいないことに気付く田所と飯塚。
「どうしましょう?田所のあんさん。前回は愛子ちゃんが女の子の声で中の奴らがカギを開けてくれましたけど。今回は野郎二人ですよ」
「うーん、ちょっと自分に任せてもらえますか」
お!さすが田所のあんさん!こんな時も機転を利かせて何かいいアイデアがすぐに浮かぶとは!頼りになるなあと思う飯塚。そして片方の鼻の穴に指を突っ込む田所。そしてインターフォンを鳴らす。
「はい?」
インターフォン越しに男の声が。すぐに片方の鼻の穴に指を突っ込んだ田所が返事をする。
「あ、私です」
「誰だ?お前?」
「あれ?通用しない…。おやじの教えだと『片方の鼻の穴に指を突っ込むと誰でもユーミンさんのモノマネが簡単そっくりに出来る』とあったのに…。今まではどんな場面でも『うわー!そっくりー!』と言われてたのに…。くっ、奴ら一筋縄ではいきませんね」
試しに同じように片方の鼻の穴に指を突っ込んでみて『どおしてどおしてわたしたち』と歌ってみる飯塚。あ!本当だ!似てる!と驚く飯塚。と、同時にこんなことをしてる場合じゃない!とも思う飯塚。
「あのお…、中の奴ら、開ける気ないみたいです」
「しょうがないっすね。すいません。ちょっと下がっててもらえませんか」
カメラはすでに回っている。まさかと思いつつ少し田所から離れる飯塚。そして結構頑丈に作られているであろうドアに向かって蹴りを放つ田所。
どごーん!
漫画のように田所の蹴り一発でドアが起き上がらない起き上がりこぼしのように、パンチしても戻らないゲーセンのパンチマシーンのように、すごい音を立てて倒れるドア。
「じゃあ行きましょう」
田所の声で中に乱入する田所と飯塚。そして前回と同じように中の人間を『どごーん!』一発でどんどんぶっ飛ばす田所。いいぞ!撮れ高さいこー!と思う飯塚。と、同時に女の子の皆さん、次こそ皆さんを救いますよ!待っててください!と思う飯塚。
「はい。正座しろ。正座。正座っつっても『乙女座』とか『さそり座』とかじゃねえからな」
ここは…、後から編集でカットだ、と思う飯塚。
「そうだ!お前ら正座しろ!正座!正座っつっても『乙女座』とか『さそり座』とかじゃねえからな」
とりあえず前回同様、田所の言葉を復唱する飯塚。と、同時に恥ずかしいなあ…、でも編集でカットするから我慢我慢と思う飯塚。
そんなことがマンションの事務所で行われている時。前回とは違うパターンで動く半グレ集団『模索模索』。
「おい。お前ら。そうそう。そこの頭の悪そうな二人。宮部と新藤だろ。あの珍走団『藻府藻府』の」
マンションの外で田所と飯塚が無事に出てくるまではと待機していた十代目『藻府藻府』ナンバーワン、ナンバーツーにそんな舐めた言葉を投げかける『模索模索』の連中らしき集団。
「てめえ…。忍…。誰に向かって能書き垂れとる」
そんな新藤を片手で制し宮部が言う。
「忍。てめえこそ根性なしがうちから逃げ出しおこちゃま集団『模索模索』か。間宮と言い、てめえと言い、根性なしが数でつるんで何してんだ。おこちゃまはもう寝る時間だぜ」
「てめえ!中山さんに向かって舐めてんじゃねえぞ!殺すぞ!ごるああああ!」
「あ?聞こえねえなあ」
「中山さん。こいつ俺がやっちゃっていいっすか?」
『模索模索』のチンピラが言い終わった瞬間、宮部の右手拳がチンピラの顔面にめり込む。思い切り漫画のように後ろにいたチンピラ三人も巻き込みながらぶっ飛ぶチンピラたち。
「新堂。田所さんや京山さんからは『深入りはするな』と言われてるよな。これはセーフだよな?」
「あ?当然だろ。忍。まとめてかかってこいよ。最初に言っとくぞ。頭の悪いおこちゃま軍団の諸君。俺らは今、プライベートなわけよ。珍走団『藻府藻府』って言ってたが『藻府藻府』とは関係ねえ。これは宮部一郎と新藤卓。二人のその辺の通行人と思ってくれ。まあ、おこちゃま軍団に絡まれた通行人だ」
「そうそう。だがな。俺もこいつも『宮部一郎』と『新藤卓』の看板しょってんだわ。俺らの看板はかてえぞ。おめえらの『看板』はかてえのか?そもそもおめえらのしょってんのはなんだ?忍。うだうだ言ってねえでこいよ。遊びてえんだろ?」
「宮部…、てめえ…」
半グレ集団『模索模索』を率いてこの場では幹部クラスであろう忍に大柄な男が近づき声を掛ける。
「おい。中山。こいつら俺が殺していいのか?」
「小沢さん。いえ…、ここは自分らで…」
小沢と呼ばれるこの男。日本最大広域指定暴力団『血湯血湯会』に所属する本職の男である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます