第52話三十人以上に囲まれながら立ち読みを続けてみた!!
『肉球会』若い衆、京山健司。元『藻府藻府』九代目頭。今でこそ『肉球会』でしっかり修行し、漢を磨く日々であるが『藻府藻府』時代の伝説は多い。喧嘩は息をするようなもの。登山家が『そこに山があるから登る』と言うように『イキがっているやつがいるからシメに行く』がモットー。ちなみに好きな言葉は『別れを悲しまず』。宮本武蔵を尊敬している。その言葉を京山は『いつでも死ねる。この言葉にはこの世をいつ去ることになっても未練はない』と解釈していた。
京山の伝説の一つ。
ある日、京山はコンビニで週刊漫画を立ち読みしていた。『藻府藻府』九代目を襲撃しようとしていた敵対チームは四トントラックに三十人の兵隊を乗せ、コンビニの駐車場にその四トントラックを停めた。奇襲作戦のひとつである。普通に何も気付かず立ち読みを続けていた京山。そしてピッタリとコンビニの出入り口に向かって後ろ向きで四トントラックを停めた敵対チームはコンテナの扉を開け、一斉に叫びながらコンビニに乗り込んできた。この奇襲に気付いた京山はそのまま漫画の立ち読みを続けながら頭の中で考えていた。
「(うーん…。三十以上はおるか…。道具もないし…。めんどくせえ…)」
そして敵対チームの頭が三十人以上の手下を連れてコンビニ内を占拠する。それでも京山は気にせず漫画を読み続けていた。さすがに怒鳴る敵対チームのものたち。
「おらああああ!京山ぁぁぁぁ!ここがてめえの墓場じゃああああ!」
「(うーん…。さすがに殺されるかもな…。でもただでやられるのはしゃくやしなあ…。一人、いや、二人は道連れで殺す)」
そう頭の中で思いながら、立ち読みを続ける京山。その京山の余裕にぶち切れながらも不気味な何かを感じ取る敵対チームの人間たち。その瞬間だった。京山は『たまたま』読んでいた漫画のギャグのシーンがツボにはまりクスクスと笑ってしまったのであった。
「プッ、アハアハ、ごほっ」
「(え?こいつ…。この人数に囲まれた状態で笑ってやがる…)」
「(ま、マジか…。今、確かに漫画で笑ったよな…)」
「(…い、イカレてやがる…)お、おい。お前ら。帰るぞ」
「は、はい!」
そして四トントラックに再度乗り込み、撤収する敵対チーム。
「マジですか…」
「ええ。あいつは風呂敷広げるような奴じゃありませんからね。それであいつがかしらの名刺をびりびりに破いた話の続きですよね」
「はい!」
「かしらは構わずあいつに理由を聞きました。何故『肉球会』に単身カチコミをかけてきたのかと。それでシャブの話になりまして」
「てめえら腐れ極道がシャブなんぞ売りさばいてるからじゃあ!」
京山の言葉に『肉球会』の面々が反応する。
「おいおい。うちは『薬』ご法度なんだよ。シャブってどういうことだ」
「俺の後輩がポン中になってんだよ!この辺を仕切ってるのはてめえらだろうが!」
「おい、坊主。もうちっと詳しく話聞かせてくれるか。うちのシマでシャブってどういうことや」
『肉球会』組長、神内の言葉に、オーラに、さすがの京山も冷静さを取り戻す。京山は常日頃から将来ヤクザにはならないと思っていた。自分が最強だと思っていたから。京山の理論。
『自分より弱い奴をアニキと呼べるのか?』
そんな十代の狂犬・京山だからこそ感じ取った。
「この男は『本物』だ」と。
「そんなことがあったんですね…。それでどうなったんですか…?」
「あー、結局あの時は徹底的に調べたら、うちのシマじゃなく、わざわざ遠出して買ってたってことが分かりまして」
「それで健司は『肉球会』にお世話になることになったんですか?」
「いや。それはまた後々っすね。確か、最後は地検に拘留された後でしたね」
「地検ですか…?」
「ええ。二十日拘留の間にいろいろあったみたいで」
「そう言えば健司は…。捕まりましたね」
「ええ。あいつは『日本刀』より『木刀』持たせた方がやばいっすからね」
「え?そうなんですか…?」
そしてさらに恐ろしい京山伝説が田所の口から語られる。
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