第45話おれおれ…おれおれ…
「あ、健司。今電話大丈夫?」
ツレである昔気質で屈強な組員たちが揃った『肉球会』の一員であり、ツレである京山に電話をかける飯塚。
「ん?どうした?大丈夫やで」
「田所のあんさ…、いや、田所さんからは何も聞いてないんやけど…。今回の『ぼったくりバー』の件には現役の『藻府藻府』が絡んでるみたいなんや。それで他にも『闇金』やら『違法デリヘル』やらといろいろやってるみたいで」
「らしいな」
やはり情報のプロである組織関係。早くも昔気質で屈強な組員たちが揃った『肉球会』もいろいろと情報を掴んでいるようである。と思う飯塚。
「で、いきなり例の『ぼったくりバー』があっという間に経営者も代わって、健全な店になったみたいなんやが…。そっちの方たちが動いたの?」
「ああ、まあ。うちのおやじも『これは自分の不始末』と散々反省されておられたし、おやじの顔に泥を塗られたからにはくずなりにも見栄があるからな。まあ、現役のメンバーの方にも話を水面下で聞き取りしてる段階や。そっちの方は何も心配せずに『ユーチューバー』の方頑張ってくれ。田所の兄貴も昔気質で魅力的な人やろ?」
「ああ。あの方は素晴らしい。最高だ」
「まあ、組の方は『破門』になってるけどおやじからもシマウチではしっかり守るようにと言われとる。わしからもツレとして頭下げるぜ。田所の兄貴をくれぐれも頼むな」
「何言ってんだよ。俺の方こそ田所のあんさんにはよくしてもらってばかりだぜ」
「え?『あんさん』?」
「あ!いや、今は田所さんから言われて、『田所のあんさん』『飯塚ちゃん』と呼び合ってるんや」
「へえー。あの人らしいな」
「そっか…」
さすが田所さん、兄弟分からも慕われてますね!と思う飯塚。
「それよりお前。今回の件は『藻府藻府』以外の組織、わしらの同業、つまりはそういう人間も関わってるみたいや。まあお前には田所の兄貴がついてるから何も心配してないが、わしらもすぐに動けるようしてる。お前は『ユーチューバー』として『組チューバー仁義』を頼んだぞ。組の皆さんも楽しみにしてるから。あ、これはプレッシャーをかける意味とは違うからな。お前のペースで田所の兄貴と納得のいくものを作ってくれ」
ツレの気遣いが心に染みると同時にやはり『他の組織』が…。と思う飯塚。
「分かった。最高の動画をバンバン撮っていくから。今も田所のあんさんがすごく活躍してくれててええものが撮れてる。『肉球会』の皆さんにはくれぐれもよろしくご期待くださいと伝えてくれ」
「おう。じゃあまた」
電話を切る飯塚。隣では昨夜飲み過ぎた田所のあんさんがものすごいいびきをかいて寝ている。昨夜は久しぶりに飲み過ぎたようでそのまま飯塚の家に泊まってもらった。れこさんにも連絡はしてないみたいだ。それにしても気持ちよさそうに寝ているけど、裏ではいろいろと素早く『肉球会』の皆さんと連携されて動かれてたんだ。さすがだなあと思う飯塚。
「うーん。むにゃむにゃ…。やれやれ…だぜだぜ…。どっとこむ…。むにゃむにゃ…。ぐごーーぐごーーー」
思わず微笑んでしまう飯塚。今はゆっくり休んでくださいと思う飯塚。
「うーん。むにゃむにゃ…。おれおれ…おれおれ…。ぐごーー。ぐごーーー」
え?と思う飯塚。オレオレ?と思う飯塚。
「うーん。むにゃむにゃ…。おれです。たどころです。たどころあつしです。てめえしょうごくは…、むにゃむにゃ…ぐごーーー」
じ、仁義だ…。寝言で仁義を切っている…。と思う飯塚。少しでも変な想像をしてしまってすいません!と思う飯塚。そして『肉球会』の皆さんや田所のあんさんのためにも頑張るぞ!と改めて気合を入れなおし企画書を一人で作る飯塚であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます