第38話『ボトルマン』の分

「そやなあー。うちの系列で良心的な金融屋があるからそこで貸してもらえや」


「え?『系列』ですか?金融屋さんも経営されているんでしょうか?このお店は。それは便利ですね。良心的な金融屋さんなんですよね?半額にしてくれたりするんですかね?」


「あああああああああああ?そやなあ、『日三』ってところやなあああああああ。どや?良心的やろ?」


 『日三』って…。と思う飯塚。一日に三割の利息のことだよねえー。と思う飯塚。日大三高じゃないよねえー。と思う飯塚。それに『系列』って言っちゃったよ。と思う飯塚。


「え?『悲惨』なんですか?それは良心的ではないのではないでしょうか?」


 ぷ。さすがあー、田所さんはトンチが利いてるなあー、そこにしびれる!あこぎですー!と思う飯塚。


「おいごるああああああああああああああ!さっきから下手にしとったら調子こきやがってええええええええ!ええからさっさと払わんかいいいいいいいいい!払うか、金借りるかどっちか選べやああああああああ!」


 怒れ怒れ!そうだそうだ!いいぞー!と思う飯塚。これは受けるぞー!何しろ前代未聞の三百万円ぼったくりバーだぞ!しかも闇金のおまけつきだあ!!と思う飯塚。


「あのお、ひとつだけお聞きしていいですか?」


「なんじゃわれ?おもろい髪型した兄ちゃんよー」


「あ、すいません。ひとつだけじゃなかったです」


「ああ?ええから払えやあああ!上の人間呼ぶぞお!」


 おお、お決まりのセリフだ。と思う飯塚。それにしても田所さんは何を聞くのだろう?と思う飯塚。


「あなたは上の人間を呼ぶとおっしゃってましたが怖い組織の方なのでしょうか?」


 昔気質で屈強な組員であった田所さんがそれを確認しますか。さすがだ。と思う飯塚。わくわくしてしまう飯塚。


「あ?今は言葉一つであれやからなあ。わしの口からは言えんなあ。でも『こわ――――い』お兄さんや組織があるからねえ。痛いのは嫌やろ?痛い思いするのは嫌やろ?でも〇〇さんは何するか分からんからなあー」


「その〇〇さんはその筋の方でしょうか?」


「それは言われへんよー。今は言うたらあれやろ?」


「お金ならあるんですよ。ほら」


 そう言って一千万円の入った紙袋の中から札束を取り出す田所。え?持ってきてたんですか?と思う飯塚。そして百万円の束を三つ、テーブルに放り投げる田所。え?と思う飯塚。そして態度が急変する店員。


「あ、お客様も人が悪いですねえー。現金をお持ちなら最初に言って下さればいいのに。それではご精算いたしますね」


 目をキラキラさせながら札束に手をかけようとした店員の手を掴む田所。


「金は払います。乞食じゃありませんので。『ボトル』も入れましたし。その前にご質問だけにはお答えくださいよ」


「はい!なんでもお答えします!どうぞどうぞ」


 すごい動画が撮れてるぞ…!と思う飯塚。この後どうなるんだろう?と思う飯塚。田所の質問タイムが始まる。


「まず、このお店を経営されている方はその筋の方でしょうか?金融屋さんもされていらっしゃるとお聞きしましたがそれも同じくなのでしょうか?○○さんという方はどういう方でしょうか?」


「だーかーらー、皆さんは『堅気』の方ですよね?あんまり深入りするとあれじゃないですか?『肉球会』って知ってます?○○さんは怖いですよ。じゃあお会計しますね」


 え?あの会議で〇〇さんって名前の人はいなかったよね?いやいや、それよりこのお店は『肉球会』の名前を使ってるよ!?と思う飯塚の前に田所が激怒する。メロスよりも早く激怒する。


「おいコラ兄さん。今なんつった?『にくきゅうかい』っつうたかい?あ?今から呼べや。あ?系列で良心的な金貸しっつたよな?この店も『にくきゅうかい』か?あ?わしの髪型は面白いか?そんなに面白いか?あ?」


 急変した田所に店員が虚勢を張る。


「ああああああ?『肉球会』なめとったらあかんどこらあ!このリーマンヘアーの昭和の漫才師がよおお!」


 僕知りませんよー。と思う飯塚。


「柿ピーで三百万だとおおおおおおおおおおお!てめえ、ふざけたバイしやがって!てめえは『ハンチョウ』かああああああああああ!ここは地下かあああ?イカサマサイコロ使いやがってえええええええ!ノーカンじゃねえんだよおおおおお!ごね得じゃねえんだよおおお!外出でグルメかああああああああああ?てめえがギターだとおおおおおおおおおおお!チョコチップパンだとおおおおおおおお!ぶち殺すぞてめえ!!!」


 その言葉と同時に店員の顔面に拳を入れる田所。そして漫画のように八回転ぐらいクルクル回りながらぶっ飛ぶ店員。そして田所が一言。


「今のは『ボトルマン』の分だ」


 いろいろありすぎて何から突っ込んだらいいのか分からないがとりあえず神内さんの教えは幅広いなあと思う飯塚であった。

 そして異変に気付いたのか、おねえさんが呼んだのか。別の怖そうな人が現れる。あ、この人は本職っぽい。と思う飯塚。わくわくが止まらない飯塚。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る