第29話歌えよごるああああ!
そうだ!田所さん。その手を放しちゃだめです!一千万円ですよ!と思う飯塚。
「この街でそんな店があるんですか?詳しく聞かせてください」
「離せよ!離せ!いてええ!!いてええええ!」
田所の握力はめちゃくちゃ強い。リンゴを握りつぶすぐらい朝飯前どころか寝起き直後である。
「詳しく聞かせてください」
「てめえ!こーちゃんの足を離せよ!!」
田所は顔面に思い切りいい蹴りを入れられてもその手を離さない。
「詳しく聞かせてください」
田所さん…。僕はどうすればいいんだ?と思う飯塚。それでもしっかり撮影はしている。
ブオオオオオオオン。
河川敷をバイクが通りすがる。バイクの運転手が異変に気付きバイクを停めて田所たちのもとに降りてくる。
「あ!新藤先輩!」
「おー、お前らか。何やってんだ?おやじ狩り?ダセえことしてんじゃねえぞ」
「いやー、このおっさんが歩きタバコを偉そうに注意してきやがりましたんでシメてるところです」
「おいおい、あんまやりすぎんなよ…、え?田所さん?」
「え?新藤先輩の知り合いでしたか?」
「馬鹿野郎ぉ!」
新藤と呼ばれる男が調子ぶっこきまくりの中坊たちをぼっこぼこにぶっ飛ばしていく。こーちゃんと呼ばれるリーダー格らしき男も思い切りぶん殴られるが田所の手が足をしっかり握っていたのでゲームセンターのパンチマシーンのように、起き上がらない起き上がりこぼしのように地面へ叩きつけられる。
「勘弁してください…。新藤先輩…」
「すいませんでした!!田所さん!こいつらは自分が責任もって地獄見せておきますので!おい!お前ら!この人はあの『肉球会』のお方やぞ!俺の大先輩の京山さんの兄貴分のお方やぞ!分かってんのかこらああああ!」
さっきまで調子ぶっこきまくりの中坊たちが新藤と呼ばれる男にぼっこぼこにされている。この男。そうとう強い。と思う飯塚。健司の後輩?『藻府藻府』の現役?と思う飯塚。
「そこのお方、暴力はやめてください」
こーちゃんと呼ばれる男の足をようやく離した田所が血だらけの顔で正座したまま言う。田所さん…。と思う飯塚。
「いいんですか?田所さん」
「それより新藤さんですか。そいつらの先輩ですか。ちょっと聞きたいことがあるんですが」
昔気質で屈強な組員たちが長い間守り続けてきた街が汚されている。先日のぼったくりバーに続き、中坊を遊ばせるキャバクラやデリがあるのか?情報のプロである自分たちの目を掻い潜ってそんな店がのさばっているのか?これは自分らの怠慢だ。と思う田所。
「はい。なんでしょうか?自分は十代目『藻府藻府』福総長をやらせてもらってる新藤卓と言います」
田所が流している血を着ていたシャツを脱ぎ、「こんなものしかありませんがすいません。失礼します」と上半身裸で田所を介抱する新藤。ものすごい筋肉隆々である。相当鍛えてある。調子ぶっこきまくりの中坊は並んで正座している。
「この街が汚されてるようです。詳しい話を聞かせてください」
田所さん…。昔気質で屈強な組員たちが集まった『肉球会』…。やはりすごい人たちの集まりだ…。それにこの新藤と名乗る十代目「藻府藻府」のナンバーツーも男だ…。と思いながらこっそりと撮影を続ける飯塚。
「おい!ガキら!知ってること全部正直に歌えよごるああああ!」
「は、はい…」
こんな状況で「あ、歌わせてる…」と思う飯塚。さすが現役『ユーチューバー』である。
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