第19話覚悟
「やはり『反社』であることがバレないようにすることが一番の問題だと思います。アイデアは本当に面白いものが多いと思いましたし受けると思いました。僕が思うに、やはり問題はそこだけだと思います」
飯塚はお世辞ではなく本音で言っている。
「そうですか。アイデアはいいんですね?」
「あのお、私が見た動画にマスクや覆面をして素顔を出してない『人気ユーチューバー』の方もいましたが。あれはいいんじゃないでしょうか?」
裕木さんはあの『カリスマユーチューバー』の動画を見たんだ…、と思う飯塚。
「確かにあのような手法もありだと途中までは僕も考えていました。ただ、皆さんの場合、やはり悪を退治するのは欠かせないと思います。そうなると正体不明では懲らしめる相手の反応も薄くなるような、言い方は悪いですが『やらせ』と思われる可能性もあります。それにどうしても編集は出来ますがバレる可能性もありますので」
「そうですか…」
「それなら俺の後輩を使いましょうか?それなら組織に属してませんし、問題はないかと」
『肉球会』とはまた違う意味でこの町では有名な暴走族『藻府藻府』のOBである京山が言う。京山の言葉に住友が反応する。
「健司。お前、大事な後輩をわしらみたいなもんに関わらせるつもりか?あんな未来ある若者たちにわしらの都合を押し付けるのはあかんぞ」
「すいません。軽率でした」
本当に『肉球会』の人たちは筋が通っているというか、信じられる人たちだと思う飯塚。本当になんとか力になりたい。
「『ユーチューバー』とは少し違いますが『Vチューバー』というものもあります。実際に見ていただいた方が早いと思いますので皆さんご覧になってもらえますでしょうか?」
そう言って飯塚がスマホに『Vチューバー』の動画を再生させる。昔気質で屈強な組員たちが揃って飯塚の周りに集まる。
「なるほど。これはアニメみたいですが作るのが大変じゃないでしょうか?」
「いえ、今は簡単に編集できるソフトがありますのでそれは大丈夫です」
「でも、これだとちょっとイメージしづらいですね」
「確かにそうですね。アクション的な要素がないですので皆さんのアイデアは生かせないと思います。すいません。僕が言っておきながら軽はずみな発言でした」
「いえいえ。何事も勉強ですので。知ることが出来て感謝です」
昔気質で屈強な組員たちが『Vチューバー』とメモを取る。何かいい考えはないものかと飯塚も一生懸命考える。そして閃く。
「皆さんが動画に出なくてもその存在を使える方法がありました!『ユーチューバー』ではなく『カメラマン』になればいいと思います!音声は変えられます。そしてカメラマンは常に現場にいて相手も認識します。そして動画には映りません。これならいけるかもしれません」
「ああ、確かにそういう動画を見ました!」
「わしも見た」
「私も見ましたね」
そこで神内が冷静に尋ねる。
「飯塚さん。カメラマンが『反社』とバレたらどうなりますでしょうか?」
「それは…。今すぐにお答えすることは出来ませんがバレるリスクはゼロではないと思います」
「すいません。本当に飯塚さんが素晴らしいアイデアを考えてくれているのに申し訳ありません。ただ、バレる可能性が一ミリでもあればそれはやめておいた方がいいと思います。それに実際に『誰か』が動画に出演しなければいけません」
神内の言葉は的を射ている。この問題さえクリアすれば。その問題が大きな壁となる。その時、昔気質で屈強な組員の一人である田所が言った。
「おやじ。自分を破門にしてください」
田所の言葉に張り詰めた空気が漂う。
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