海路

中学2年生になったが、授業より部活の柔道部に気合が入っている。


4月になったこともあり、新入部員が入っきた。

 今まで、やって来た洗濯などの雑用は1年生に回っていくのだが、去年までやっていたことを急にしなくてもいいと言われてしまうと、自分なりのルールが破れたような気がして困ってしまった。

 なので、部活の柔道場に入ると、1年生を気に留めず、掃除等の雑用を行ってしまい、

「相沢ー、1年の仕事を奪うな」

「1年にやらせろ」

愛梨は他の部員たちから怒鳴られる始末だ。

3月まで雑用任務をこなしてきたのに、急に辞めることは本当に難しい。


 去年の春、中学に入学した際に、部活に入りたいと思って、精神的にも、肉体的にも強くなりたいという思いただけで、経験のない柔道に入ろうと決めた。

 その日、お母さんが「何で柔道部なの…」と呟きながらも、入部届の保護者のサインを書いてくれて、無事、柔道部に入部することができた。

 

「愛梨、相手して」

「はい」

 幸田こうだ 美幸みゆき先輩が声を掛けられ、練習相手にするため、先輩の元に行く。

「お願いします」

 美幸先輩は63kg級の選手で、愛梨は52㎏級だった。愛梨の方が軽いので、先輩の練習相手には、相応しいのかは分からなかった。

 美幸先輩は、いつも私を練習相手に選んでくれる。

「愛梨は練習相手にしては、柔軟に対応してくれるから」と言われたら、嬉しくなってしまう。

だけど、先輩のおかげで、少しは体幹が鍛えられたのかもしれない。


 去年の6月に他校との練習試合をした際に、負けたことが悔しかった。中学生から柔道を始めた人間なんだから、当り前かもしれないけど、悔しくてたまらなかった。そこで勝ちたい気持ちが、更に強くなっていった。顧問の鮎川先生は、「負けて悔しいい思うがあるのだから、きっと、強くなれるよ」と励ましてくれた。それに、勝つために毎日の基礎練習は怠らないように指導された。



友人の彩美が吹奏楽の部活が終わって、ちょうど、一緒に帰ることになった。

「お疲れ」

彩美は私と違って、汗一つないほど、涼しげな顔をしている。

「どう、柔道は充実してる?」

「してるよ」

背中とか首とか痛いけど、やっぱり日々勝ちたい気持ちが強くなり充実した毎日を送ることができている気がする。


よく、お母さんやお父さんが「柔道とどこが楽しいの?」「背中とか、打ち付けて痛くない?」など言われたり、

兄の亜蘭に、「弱いのに、何で柔道を続けてるの?」何度も言われたこともあったが、愛梨はあまり気しないようにしていた。



  今年の11月に行われる地区大会に出て、勝利を得たい。それまでに強くなりたい。そのため、頑張らないといけない。

 今年は6月の他校との練習試合で、今の実力を知ることになる。



 


 

 

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