ハッピーエンドの川に流れて
灰崎千尋
みひつのこい
「ハッピーエンド」というテーマをいただいて、最初は本当に、真っ直ぐなハッピーエンドを書くつもりでいました。だって主催が神ひなさんですもの。
主催を狙い打ちするなら恋愛ものかしら、恋かぁ、こい、「未必の故意」って語感がいいよね。アナグラムの「ひみつのこい」と引っ掛けて何か書けるかなぁ、というのがスタートだったはずです。
はずなんですが当時、ちょっと心がダークサイドに墜ちていたのと、「未必の故意」って言葉からどうしても怪しい関係を連想し、「セカンド女の匂わせ」というシチュエーションがあまりにもしっくり来てしまい、方向転換。今の形になりました。
結果、色んな方の心に爪痕を残せたようで、作者は満足です。
書き出しに関しては、「短編は一行目から殴れ」という本物川さんの教えに基づいて、アレになりました。個人的にも気に入っています。後が続けやすいですし。
そこからは、ぽつりぽつり、「未必の故意」を落としていくような文体を心がけたような気がします。諦念が見え隠れするような。伝わっていると良いのですが。
終盤は折角「ハッピーエンド」というテーマなので、「めでたし、めでたし」にしたかったのです。そのための補助線のような描写を入れつつ。後味の悪さを感じてもらえたら嬉しいです。
結末を何故ああいう形にしたかと言うと、「私」には決定的な恋の終わりが必要なのと、和希みたいな男と付き合うメグちゃんという女は、そういう判断を下せる強かさを持っているか、あるいは本当に何にも気付かないまま周りを蹴落としていく天然か、どちらかだと思うんですよね。
ちなみに「私」というキャラクターは、私自身にもの凄く近いです。思考回路がほぼ自分。と言っても、ああいう関係になったことは全く無く、その辺は想像です。(作者は非モテ)
でも未来のないしんどい恋をしたことはあって、その相手のズルい男をもっと外道にして和希にしました。謎の念者さんも講評で言及していましたが、本命以外との行為で色々冒険する人、古くからいますよね。
メグちゃんの設定は和希のモデルになった男の好みを反映させました。彼女が「私」に本当に気づいていたかどうかはご想像にお任せということで。
本作は読む人によって誰の「ハッピーエンド」か、という解釈が分かれるようで、皆様の感想を読んで気づかされる視点もあり、書いた後もなかなか楽しかったです。良ければ皆さんの解釈も教えてください。作者的な結論もなんとなくはありますが、ここで明かすのは野暮なのかなぁ、などと。
本作は大賞選考の末端に加えていただき、謎の金閣寺賞をいただく結果となりました。ありがたいことです。
余談ですが謎の金閣寺さんの【ホギャァァァーーーーッ!(※情緒を破壊され尽くしたので叫ぶしかない)】から続く熱い講評は、是非本編と合わせて読んでいただきたいです。大好き。(No.27に「みひつのこい」)
https://note.com/usamiharu0330/n/n5f00eeeb7d8b
そしてジュージさんからは、作品のあらゆるところを汲んで絵にしてくださったファンアートをいただきました。是非ご覧ください!
https://twitter.com/GNekogasuki/status/1307115452041170945?s=19
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