第1話


(輝)



俺自身、約17年間生きてきた中で1番と言っていいほど今、日々頭を悩まされている。今後の行動から、自分の人生が幸せになれるのか、どん底に落とされるのか、のどちらかになってしまうかもしれない。


というのも、ある女の人と関係を持ってるからである。でも、俺自身が躊躇している部分もかなりあり、そして怖いという意味もあり、中々それ以上の進展もない。





そして俺は先日、この話を一部の人に打ち明けた。元々同じクラスで同じ部活の志村光都と大谷朱哉と、あとクラスの他数名は知ってるのと、同じ小・中学で俺の恋愛を昔から見てきている熊木詠斗も知っている。




まあつまり何があったかというと、同じ高校で特進の先輩である大槻萌々という先輩がいるんだけど、元々学祭とかの関係で特進同士なので親しい仲ではあった。


夏休みの部活帰り、先輩は夏期講習終わりで学校に来てて、たまたま会ったんだ。方向は違うが、駅まで一緒に行こう、ということで歩いていた。


その時に、お互いの恋バナになった。というのも、俺が春先に、元々付き合っていた女の子、花と別れて。それも、萌々先輩の友人の後輩、ということで花と仲良くて、よく話聞いていたらしいから。

それで萌々先輩も、付き合っている彼氏さんはいるんだが、どうやら浮気されているようで。でも、彼氏さんは浮気を認めないまま、当時に至った。ちなみに今にも至るけど。


何せよ彼氏さんの浮気は体の関係。でも萌々先輩は彼氏さんとはキス以上のことはしたことないと。

それでそのまま流れでなぜか俺と萌々先輩がそのまますることになってしまったのね。当時は、まあ1回くらいいいやって思ってたし、俺も花と別れてから別に好きな人も何もいないし、って思って。



…だったはずが、今でもなぜか続いてる、ということ。だから俺が日々頭を悩ませている。

別にやってること自体は正直嫌ではないけど、罪悪感が大きい。その上に、これ以上関係を進めてはいけないと自分の中で勝手に思ってる部分があるから。


難しいな、男女関係って。今までみたいに単純な付き合い方って結構楽だったよなぁ、と思う。過去に3人とお付き合いさせて貰ったことがあるが。







「ちゃんと相手に本音聞いた方がいいよ」

と。3年の豊田柚斗先輩から以前、アドバイスを受けた。相手が何を考えて俺と接しているか、聞かなきゃ分からないから、って。意外と、平然と過ごしているように見えて企んでる人とか多いからねって。柚斗先輩もそれで昨年酷い目に遭ってるんですよね。






そう思っていた、9月のある日のことだった。



昼休み、同じクラスの朱哉と一緒に学食を食べに行った時に、席を探していると、萌々先輩とクラスで仲の良い、そして俺の元カノの部活の先輩でもある光梨先輩に手招きされた。隣には萌々先輩もいた。

ちなみに俺自身は3月まで彼女がいた。中学から付き合ってて高校も同じ人だったが、俺自身が冷めてしまったのが原因だ。まあ発端となるゴタゴタもあったんだけど。



「どうしました?」

と俺は聞く。すると、


「萌々の相談乗ってあげて」

と光梨先輩は言う。



そして俺と朱哉は先輩たちと同じ席に座り、話を聞くことにした。



「もしかして、また何かあったとか…?」

と俺は聞くと、

「ねえ!どうしたらいいと思う?!」

と結構大きめの声で言ってきた萌々先輩。…何かあったっぽいな。



話を聞くと、彼氏さんと別れ話になっても、普通に言うだけじゃ通用しないというし、相変わらず浮気は認めていないようで。

普段は心優しい萌々先輩だから、こうなってしまった感はあると思うけど、これは性格だからまあ、仕方ないとは思う。


…それだけじゃない。強引に引っ張られたり捕まった挙句、やられそうになって。…思い出すだけで気持ち悪いと言っていた。




「ちなみにそれってつまりは…」

と俺は聞くと、


「いや、私が拒んだから最後まではやってない。でも嫌だって言ってるのに無理矢理…」

という返答が萌々先輩から返ってきた。



ちなみにその後は逃げるように帰って、結局別れられてはいないみたいだった。



「それで、何か良い方法ないかなーって話してて、恋愛経験そこそこある輝くんを呼んだの」

って光梨先輩に言われる。


「光梨先輩、それ俺の話分かってて言ってます?」

「バレた?だからそのスキルを萌々に伝授してほしい…」


そう、俺も元カノと別れ話の時、引き止められたからね、しばらくの間。

その話を知ってる朱哉も、


「ああ、そういえば輝も経験者か」

と苦笑いしている。



「でも、俺は単純に嫌なものは嫌、って言い切っただけですけど、正直に言うと、萌々先輩は性格良すぎるから逆に、嫌って言いきれない部分もあって、その結果が今だと思うんですよね、だから本当に別れたいんだったら、引き止められても嫌だって貫き通すしか、俺は思いつかないですね。」


と言うと、先輩も、なぜか朱哉も、拍手をしてきた。



「ここ拍手される場面?!」

「いや、素敵だと思ったよ。私も頑張る!」

「あ、ありがとうございます…。」


なんて話して、この日の昼休みは終わったのだ。







そのあと、朱哉に


「…正直萌々先輩のことどう思ってるの?」

と聞かれる。


「元々見た目も中身もタイプの女性だから、結構最初のほうから気になっていたくらい」

「お、顔赤い。こりゃ好きですね」

「うるせ」


でも正直、俺の方からこんなに人のこと好きになるってこと、実は初めてかもしれない。今までは、告白される側の人間だったから。


でも、このまま本気で好きになったところで、俺は良いのだろうか。




「でも、このまま好きになって、自分からガツガツ行くのも、いいかもしれないな、とは思うけど」

「じゃあまずは萌々先輩を今の彼氏さんから完全に引き離さないとな」

「表現の仕方がえぐいのが朱哉らしいわ」



俺の恋はもう既に、始まっていたようで。




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