第2話
そして話は10月後半、修学旅行になる。
体育科の修学旅行には、4泊5日のうちに、1晩だけキャンプのスケジュールが組み込まれている。自分たちでご飯を作って、テントに泊まって。設備が整ったキャンプ場のため、結構すごいんだ、これが。
今年は4日目に組み込まれ、修学旅行の終盤には持ってこいの行事。ちょっとしたゲームをしたり、バーベキューをしたり。これが星の里高校体育科の伝統でもあるのだ。
散々楽しんだ後、クラス全体で恋バナで盛り上がった。何せよ、このクラスにはカップルがいる。
他にもサッカー部、バレー部などがクラスにはいるが、その2部活も恋愛は特に規制されていない。また、夏からはソフト部も恋愛解禁されて、サッカー部とソフト部のカップルだっている。あ、ソフテニカップルもいるけどね。楓と新菜が。
そして担任はサッカー部の顧問。恋バナ大好きで自身も来年結婚式を挙げる予定の若い男の先生。
だからそれこそ、琴未が元彼に振られた後、担任に相談したっていうのもある。それで琴未は吹っ切れたようで、あの日は他にもクラスのソフテニみんなの恋バナ聞いていたのな、先生。
そんな話の最中。
「そうだ歩人、ちょっと話ある」
と琴未に言われ、そのままひっそりと、少し離れたところに移動した。
そして琴未に連れられるまま歩くと、ベンチを見つけた。
「あ、丁度良い。ここで話す。」
と琴未は言い、俺たちはベンチに座った。
「元彼とのこと、歩人にお礼言うタイミング中々なかったから。いっぱい相談聞いてくれてありがとう。」
と言われ、ラッピングされた小さい箱を渡される。旅行中に買ったというのが包装紙で分かる。昨日行った場所の名前が包装紙に書いてあったから。
「まあ今回だけじゃなくて、小さい頃から色々とお世話になってるし、まともにお礼言ったことなかったし、改めて感謝の気持ちを込めて。いつもありがとうね」
「ありがとう。全然お礼とか良いのに」
「いや、私は歩人に何回も救われてるし。また惚れちゃいそう、っていうくらい。」
「なにそれ、予告?」
「かもしれない。また好きになって告白するかもね。」
とお互い5秒くらい見つめあって、フッと、笑ってしまう。
「だからその時は歩人のことちゃんと振り向かせるから。覚悟してな」
「あら、宣戦布告された」
と、お互い笑う。…まあ、俺もそうなればいいのかな、なんてこの時、ひっそり思いました。
俺自身は過去の恋愛から言うと、付き合ってからベタ惚れするタイプだなぁと思う。だから、問題は付き合うまでなのかな。中学の時のこともあって、もう恋愛に恥ずかしい失敗したくないし。でも恋愛って慎重になるものではないし。
琴未は女友達の中で1番心を開いている友人だ。少年団の時から一緒で、高校もまさかの同じ。だから、1番失ってはいけない存在だと思っている。そこが、難しい。失敗を前提に考えるものではないのはわかってるけど、でも、もしもの時を考えてしまうとそうなってしまう。
そして戻ると、みんなはテントに戻ってる人は戻ったり、話してる人はベンチで話してたようだ。
「お、どこ行ってた?ずっといなかったけど」
と、詠斗に言われる。
「ちょっと、話してた」
「琴未とどっか行ってたの?」
「あら、バレてた?」
「長い間2人いなかったから、もしかして2人で抜け出してどっか行ったの?ってみんな言ってた」
「別に何も無いけどね。元彼とのゴタゴタの時、相談いっぱい乗ってくれてありがとうってお礼言われただけ」
まあ、告白予告?みたいなことはされたけどね。
そこで俺は皆に質問した。
「ねえ、過去に告白されて振った相手のことを、今更になって好きになるってアリだと思う?」
と。
「いややっぱ何かあったじゃんお前!!」
と純希にも突っ込まれる。
「それとこれは別!!」
「ってことはちょっと気になるんだ?」
続いて詠斗も俺のこと茶化してくる。
「…今はまだ分かんないよ??もしかしたらあるかもしれないのかなーって、ちょっと思うだけで」
「ちょっと思ってるんだ。相談なら乗るよ?」
「うるさい。でもいつかは世話になると思うわ。」
こんな感じで、今日は寝るまでずっと話を聞いてくれた。俺の過去の話、これからどうしたら良いのかという話。
恋愛できるできないにせよ、自分を想ってくれている琴未とは本気で向き合ったほうがいいのかなと思う、今日この頃。
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