第13話 八百屋のおじさん


おいら   何だ!?


あたい   左目痛い! 目隠し外して!


おいら  そんなの騙されないぞ。


あたい   痛い。左目!


おいら   出来ないからって、痛いとか言って逃げるんだろ。


あたい   違うの!


おいら  問題解けたら、ほどくから。


あたい  本当に痛いの。


 あたい、目隠しを解こうとするが、両手が塞がっていて、どうにも取れない。


おいら だから、問題やろうぜ!


あたい 本当に痛いの!


おいら だから問題解いてみろよ。


あたい  痛い。離して、離して。


おいら だから、解いてみろって。


あたい だから、この手ぬぐいほどいて! 痛い!


おいら おいら、騙されないぞ。

    解いた瞬間、ドッキリでした!、とかって言うんだろ。


あたい だから、ほどいてったら、ほどいて!


  あたい、下手に走って行ってしまう。おいら、一人寂しく、


おいら おいら、何か悪いことしたか?

   してないよな。

    あたいが、出来るって言うから。

    あたい、絶対に逃げやがった。

    出来ないもんだから。


  あたい、しばらくして下手から、入ってくる。

  両手に2本の手ぬぐいを持って。


あたい  (笑いながら)だまされた!


おいら やっぱり、逃げやがったな! もう一回やるぞ!


あたい いや。さっきもこれほどいてもらうのに、八百屋のおじさん、すっごく

    心配してたんだから。

    誘拐犯から逃げてきたのかって。


おいら あたいが悪いんだ。


  あたい、四角い箱の上にあるノートに「飴」という字を書く。


あたい ほら、解けたよ。


おいら そんなの違うよ。お前、なんて字書いてんだよ。なんて読むんだよ。


あたい 飴よ。


おいら 雨の日に降る「雨」を書くんだよ。


あたい そんなの問題かんたんすぎる。


おいら ダメダメ、失格。

    そもそも、目で見て、手で文字書いてるし。


あたい あったりじゃん。

    考えても出来るわけないし。

    目隠しでどうやって問題解けるわけないじゃん。


おいら おいらもそう思ったけど、あたいが出来るって言うから。


あたい それ位、簡単な問題なの。


おいら 念力で書くって言うから、念力出来ないところ見てやろうと思って。


あたい  ばっかじゃない!


おいら バカって言うな!

    あたいだって、芸能人がいるって嘘言ってるし。


あたい あたいは芸能人がいるなんて言ってないし。

  はじめは勝手においらが、芸能人がいるかもって言い出しただけだし。


おいら あたいだって、コツコツ塾も言ってないし、ウルワシ中学のことも

    嘘だったし。


あたい おいらが中学受験するって言うからいけないんだ。


おいら おいら、別に中学どこ行ったっていいじゃん。


あたい このへんの小学生は、半分以上地元の中学行くから、みんなみんな

    そのまま、中学に上がると思うでしょ。


おいら おいら、超バカだから、親が大学行けないかもって心配してるんだ。

   ドンゾコ行けば、大学までエスカレーターで上がれるし。

  それに、おいらドンゾコ一家だから。


あたい ドンゾコってすっごくカッコ悪い。


おいら やっぱりい?

    おいらもちょっぴり思ってたんだ。


あたい あそこの八百屋のおじさん、ドンゾコ大学なんだよ。


おいら そうなの!?


あたい いっつも、鼻くそほじってるの知ってる?


おいら 知ってる知ってる。こんな風にいっつもやってる。(ふりをする)


あたい だから、うちのお母さん、あそこで絶対に買わないことにしてるの。


おいら うちもそう。

    でもあたい、さっき手ぬぐい外して貰ったんだろ!

    汚ねえーー!


あたい しようがなかったの。


おいら 何がしようがないだよ。

    あたいが嘘言うからいけないんだろ。

   バリヤー!!

    ここから一歩も中に入るなよ。


あたい そんなの知らない。(簡単にバリヤーを超える)


おいら こっちに近づくなよ。


あたい いや。


おいら 鼻くそ菌が感染るから!!


あたい いや。


おいら やめろったら、やめろよ!


あたい いや!


  そうこういいながら、2人はけていく。

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