第五幕(日記)
第11話 どんぞこ
【日記モード】
あたい 9月21日 晴れ。あたい、頑張って見たよ。
筋肉モリモリの警備員の目をかいくぐって、ハイヒールが高っかくて、
サングラス掛けてて、グレープフルーツの匂いがする女性に近づいて
来たよ。
すっごく心臓がドキドキして、真後ろまで行って、あたい、
膝かっくんしたんだ。
なぜって?
だって、そのセレブすっごく背が高くて、あたいがどれだけ手を
伸ばしても、
顔まで手が届かないから。
膝かっくんしたら、それがね、・・・・上手く行ったの!
上手くヒットして、よろけて倒れこんだんだ。セレブの髪が空中に
舞って、グレープフルーツの匂いがすっごくしたんだ。
ムッチャいい匂いだった。
その隙に、セレブの黒くて大きなサングラスを取ったんだ!
そしたらね、・・・・誰だったと思う? ビックリしちゃった!
おいらも絶対に知ってる有名人!誰だと思う?
おいら、絶対びっくりすると思う。
・・・・実はね、ほんとは誰でもないの。
全部嘘なの。モリモリの警備員も、ハイヒールも、サングラスも、
グレープフルーツも全部嘘!
コツコツ塾も行ってないし、ウルワシ中学も当然受けないの。
おいらなんか、どっか遠くの中学にいっちゃええええ!
おいら なんだよ、嘘なのかよ。
なんで嘘なんかつくんだよ。嘘なんかついてもすぐにバレし。
嘘は泥棒の始まりなんだぜ。
・・・ほんとはよお、実を言うと、おいらも。
おいらもそうなんだ。塾なんて行ってないし。
正確に言うと、毎回塾休んでるし。
算数もつるかめ算とか植木算とかよく分からないし。
あたいはすげえよな。
おいら絶対、あたいが塾に行ってるもんだと思ってた。
小学校でいっつもセンコーの質問に手を挙げて答えてるし。
おいらなんか塾の成績も当然ビリだし、中学だって絶対にどっこも
受からないんだよ!
あたい つるかめ算も植木算も、理解しちゃえばなんてことはないよ。
ほんとだよ。
おいら あたいは頭がいいから簡単かもしれないけど、
おいらにとっちゃ大きな壁。
とてつもなく大きな試練なんだよ。
国語も漢字を一杯憶えないといけないし。
やってもやってもなかなか、頭に入らないんだ。
あたい 少しずつやって行けば大丈夫だから。ほんどだよ。
それで、どこの中学受けるの?
おいら あんまり言いたくない。というか、書きたくない。書きたくないけど。
あたいには教えてやる。・・・・ドンゾコ中学だよ。
どう頑張ってもドンゾコしか受からないって、
塾の先生には言われてる。
おとんもおかんもドンゾコ出身だし、
おじいちゃんも、ひいおじいちゃんもドンゾコ出身だから、
完全にドンゾコの運命なんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます