耳の裏のにきび

鈴木みは

耳の裏のにきびに思いを馳せる

耳の裏に、にきびができた。

気づいたらそこにいた。

いつ出来たものかは分からない。

しばらくすると、そんなことはすっかり忘れてしまった。


たとえば、鼻の下のにきびなら。

ぷくっと小さな赤みができれば、どうか大きくならないでくれと祈るだろう。

それがみるみる腫れていくつれて、にきびしか目に入らなくなる。

鏡を見るたび、恥ずかしさと憂鬱でいっぱいになる。

頭の中は、もう鼻の下のにきびのことばかり。

精一杯手入れをして、薬を塗って、化粧で隠して、

にきびのためにたくさんの時間をかけることだろう。


気づくと、耳の裏のにきびは無くなっていた。

そっと、出てきてしまったことを悔いるかのようにいなくなった。


きっと勇気を出して、それでも注目を浴びることを疑わずに

外の世界へ出てきたのだろう。

しかし、現実はそう上手くいかない。

全く気付かれることのない、暗い場所へ出てしまった。

それでもいつかはと、必死で大きく成長してきた。

たとえ今は注目を浴びなくとも、頑張ればいつか気づいてもらえると。


そして、とうとう気づかれたのだ。

これまでの努力が報われる時が来た。きっとそう思ったに違いない。

それなのに、にきびは一切の興味を払われなかった。


にきびは、諦めてしまったのだろうか。

どれだけ頑張っても、しょせん自分では無理だったのだと。

自分の限界を知ってしまったのだろうか。

たとえ努力しても、全く関心を払われることのない、その程度の存在なのだと。


にきびには、輝ける場所がきちんと用意されているというのに。

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