ノーナシ人間

芦田 篝

プロローグ

2004年8月3日

11時06分


まばらに雲がある晴れの日。


2階建て

青い瓦屋根かわらやねで白い壁の家

絆多はんだ家の縁側が、いつもにもなく盛り上がっていた。


グループの中で一番背が低く、メガネ男子の月城つきしろ京也きょうやが扇風機に当たりながら

「あぁ〜、あっち〜…で、やっと次で決まり?」


「だな!絶対俺が勝つ!」

スポーツ万能で、元気だけが取り柄である

遊馬あすま 大河たいががコブシを上げて答えた。


「やっとだねー、私は皆と遊べれば、どこでも良いけどね」

いつも笑顔で、メンバー唯一の女子

綿貫わたぬき 奈々ななは半ば呆れ顔で笑いながら大河たいがに続けて答えた。


「長かったなぁ…おい大河たいが、わざわざ総当たり戦にしなくても勝ち抜きで良かったんじゃないか?」

なんでも器用にこなして、よく家を集合場合に使われてる絆多はんだ永和とわが怠そうに文句を言った。



「勝ち抜きじゃ負けたら終わりじゃん!やっぱ誰でもチャンスがあるルールじゃないと、つまらないもんね!」


京也きょうやが見透かした様に笑いながら

「とか言って、大河たいがが負けたら、面白くないから総当たりルールにしたんだろ?」

"永遠とわ奈々ななも、そう思うだろ?"と2人に聞くと


「「絶対そう」よ」とほぼ同時に答えた。


「まーまー、負けた奴は黙って見てろよ!

やるぞ!永遠とわ!」


♬〜♬〜♬


永遠とわ、電話鳴ってるよ?」

電話の音に気付いた京也きょうや永遠とわに教える。


「ん?大丈夫だよ、母さんがでるよ。それより始めようぜ!」


ー小学校6年の夏ー

梅雨が明け、ようやく夏本番になった。

同じ公立の中学校に進学をする


絆多はんだ 永遠とわ

綿貫わたぬき 奈々なな

遊馬あすま 大河たいが

月城つきしろ 京也きょうや


この4人は、夏休みに行く場所を決める大勝負をしていた。


遊園地

プール

川遊び

映画

花火

夏祭り........


行きたい所、やりたい事なんて無数にある。

その為子供同士ではよくある、口論になってしまいどうしても決まらず、それぞれが出した候補を賭けてオセロで決めることになった。


中学生になれば、レベルが上がる勉強、興味のある部活、新しい仲間との出会い。


同じ中学校とはいえ、今の4人が集まれる回数は減ってしまうかもしれない。

だからこそ彼等は、決して遊びではなく本気で勝負オセロをしていた。

そして現在、永遠とわ大河たいがの2勝1敗で並んでおり永遠とわが勝てば川遊び、大河たいがが勝てば遊園地に行く事が決まる。


ジャンケンに勝った大河たいがが一手目を打とうとした時、永遠とわの母親が縁側に来て皆に聞こえるように声をかけた。


「みんなゴメンね。永遠とわ、ちょっといい?」


「え、今!?

 後でじゃダメ?これから大事な...「いいから!少しだけだから!」



普段は見せない母親の焦った顔を見て永遠とわは驚くというよりも不満気に立ち上がり

"ちょっと待ってて、すぐ戻る"


そう言って縁側を引き戸で仕切った部屋に永遠とわ永遠とわの母親が入っていった。

部屋に入るなり母が永遠とわに言った。


部屋に入るとすぐに母親が永遠とわに言った。


「さっきお父さんの会社から電話が来て...」


電話の内容を聞いた永遠とわは大した事じゃない、どうにかなる。そう思っていた。

そもそも小学生だから、それぐらいにしか思えなかった。

しかし、この出来事がキッカケとなり今後起こる全ての事が彼の性格を変えてしまうとはこの時は思いもしなかった…




2004年8月3日

11時21分



いつの間にか外では雲が広がり小雨が降っていた。




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