第28話夢見る頃を過ぎてもだよ!いくらちゃん

「あ…、いくらちゃん」


「はーい。お久しぶりです。なかじまさん。今でも野球やってますか?ばーぶー」


「いや、あれは昔遊びでやってただけだよ」


「そうなんですか。そういえば…、今は不動産屋さんを継いでらっしゃるんですよね。ばーぶー」


「そうなんだ。ちょっとコーヒーでも飲むかい?いくらちゃん」


「はい。いただきます。ばーぶー」


(自販機で缶こーひー購入。タバコしゅぼ)


「いくらちゃんはまだ独身だっけ?」


「はーい。そうですね。ひとりが楽ですので。まあ、だらしないだけです。ばーぶー」


(たばこぷかあ)「そっかあ。なんかいいね。実は僕、もう『なかじま』ではないんだよ」


「あ、今は『はなざわ』でしたっけ。ばーぶー」


「いろいろあってね。いや、今の家庭に不満があるわけじゃないよ」


「はーい。分かります。ばーぶー」


「でもなんか最近ね。『昔はよかったなあー』と思うことが多くてね」


「はーい。なかじまさん。人は時に『つらかった過去』よりも『楽しかった思い出』に胸痛めるもんだと。ばーぶー」


「いくらちゃん…」


「今晩、付き合いますよ。自分でよかったら。ばーぶー」


夢見る頃を過ぎても人は生きていくものであると改めて思ったいくらちゃんであった。

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