「それいくらちゃん」

工藤千尋(一八九三~一九六二 仏)

第1話閉店セールだよ!いくらちゃん

「はい!安いよ!安いよー!『閉店セール』だよー!ばーぶー」


「それいくら?」


「あ、おねえさん!お目が高いっすねー!これは普通なら二十万ですが、『閉店セール』なんで千円ですねー!ばーぶー」


「じゃあくださいな」


「まいどあり!ばーぶー」


~営業終了後~


「今日もぎょうさん売れたなあー。こんなバッタもん、百円とかやでー。はっはっはー。それにしても新入りー!」


「はい!ばーぶー」


「お前、『筋』がええで。この仕事あってると思うで」


「ありがとうございます!ばーぶー」


「どや、この後、歓迎会も兼ねて飲みにいくか?」


「あ、すいません。見たいテレビがあるので。ばーぶー」


 それいくら(37)独身。


 これは「売れないものはない」それいくらの物語である。

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