街の景色、とろける夕暮れ

春嵐

01

 カフェから見える、街の景色。


 この夕焼けに染まるビルが、好きだった。いつまでも、見ていられる。


「ねえ、なんでいつもここなの?」


 ギャルの友だち。パスタを箸で啜っている。


「景色がね。だいすきなの」


 わたしは、オレンジとメロンのジュース。


「この色と同じ。この景色が」


埋茄まいなブレンドね。オレンジが50、メロンが50」


「そう。おいしいわ」


 夕焼け。ゆっくりと、沈んでいく。


「あ、忘れないうちに」


 弟に、渡すものがあった。病院の支払書。ぜんぶ弟が、払ってくれている。さすが、できた弟だった。


「弟さんに?」


「うん。払ってきたよって」


「いい弟さんね。姉の治療費ぜんぶ立て替えるなんて」


「育ててくれたお礼なんだって」


「育ててくれたお礼?」


「うん。わたしが病院で弟に色々仕込んだの。セキュリティの突破方法とか、サーバを爆発させる方法とか」


「なにそれ。席、鯖?」


「まあ、とにかく、そういうやつ」


「へえ。よくわかんないけど、稼いでるんだ?」


「うん。わたしの2倍ぐらい」


「え」


「ん?」


「あんた、顔隠した勉強配信でめちゃくちゃ荒稼ぎしてたよね」


「うん。だれでもわかるハック入門」


「それの2倍?」


「うん」


「姉弟揃って化け物だわあ」


「ばけものです。そっちは?」


「あ、兄貴。普通よ普通。中間管理職やってる。呼ぶ?」


「え」


「そっちは弟さん来るんでしょ。兄貴も見せてあげる。どうせ仕事でノックダウンしてるところだろうし。ちょうどここの近くで兄貴も働いてるんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る