第25話 スキル『過去視《past viewer》 Lv.2』

おはようございます。一昨日、映画の「テネット」を見て( ゚Д゚)???になり、昨夜もう一度見てもまだちょっと???な状態です(><)アタマワルイ


余談でした<m(__)m>

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スキル『過去視past viewer Lv.2』


記録record』について


①『星の歴史を記録する神』が記録を開始してから、その時エストがその場に現れて時までの、過去の出来事をスキルに記録される。


②エストがその場を去ってから、次のその場に訪れるまで記録の更新はされない


③スキル『記録record』を使用した位置から半径500m以内の出来事を記録する事が出来る


④目視出来ても、500m以上離れている場所の記録をする事は出来ない。



再生playback』について


①記録した場所の過去を再生する事が出来る。


②その場所にいなくてもいつでも好きな場所の過去の出来事を再生して見ることが出来る。


③他者と記録を共有する事は出来ない。



****


「あと、30分くらい時間あるけど、カリンに会わなくていいの?」


隣に座ったイリーナがそう言ってエストの顔を覗いた。


「うん。おじさんやイリーナの力を借りて入ったからね。ここでカリンに会う時は、自分の力でここに来た時だよ。」


「へぇーーーー・・・・。」


「な、、何??」


感嘆したイリーナにエストが戸惑うと、イリーナが手を合わせて指先を口先に着けながら「一丁前な事を言いのね。」と言ってクスッと笑った。


垂れた右の前髪をスッと耳にかけたイリーナがベンチから立ち上がる。


「じゃあ、他にどこか行きたいところはある?」


立ち上がったイリーナを見上げたエストは、


「アルスト城の側に行けるところまで行ってみたい。」


と答えて立ち上がった。


半径500m・・・スキル『記録record』で記録出来る範囲内・・・・スキルを使用する前にレベルが上がったことを知ったエストは、アルスト城での出来事を記録するため、出来るだけ、可能な限りアルスト城の近くに行きたかった。



****



「わぁ・・・・・。」


イリーナに案内されてアルスト城の城門の前に立ったエストは思わず声を上げた。


白く美しい石積みの城は、遠くから見ていた幻想感漂う姿よりゴツゴツとした質感を感じれる距離感で見る姿は、美しさ以上に神聖的なものを感じるのだった。


「どう?あなたが憧れる勇者たちが過ごした城は??」


アルスト城に目が釘付けになっているエストに声を掛けたイリーナは、バッと顔を向けたエストの表情に破顔した。


「す・・・凄いよ!!!!!!!挿絵で見ていた通りの姿だ!!」


「アハハハハハハ!!!!!初めて私の家を見た時と同じような顔をしてるわね!!!まぁ、でも、うちとアルスト城では比較にはならないでしょうけど。」


キラキラした目をしたエストは、イリーナの笑い声を気にせず再びアルスト城に目を向けながら


「いや、驚きは同じだよ。『凄い!!』って思った事には変わらないさ。」


とイリーナの言葉にそう答えた。


「そう・・・。」


エストの返答に目を丸くしたイリーナだったが、フッと微笑むとエスト同様にアルスト城に目を向けるのだった。


やはり・・・久しぶりにあったエストは変わったようでいて・・・大人になったようでいて根本は変わらない。


そんなエストにどこか安心するイリーナだった。



****



「ああ!!!来た来た!!!!!門兵さん、来ました!!」


「良かったですね。私もホッとしました。」


「ははは!冷や汗ものでしたね。」


出発準備を終えていたクレイグは、駆け寄ってくるイリーナとエストの姿を見て胸を撫で下ろした。


「すいません!!!!遅くなりました。」


「いや、ギリギリセーフだよ。」


出国する時間に間に合わなければ拘束される事をさっきイリーナから聞いたエストは、到着するなりクレイグに頭を下げた。


「はぁ・・・・はぁ・・・・・。」


息を切らせてその後到着したイリーナが、膝に手をつけ肩を上下させながらエストを睨んだ。


「わ・・・わたしの・・・足の速さもちゃんと頭にいれなさいよ!!!!」


「ご・・・ごめんなさい。すいませんでした!!」


エストは謝罪の言葉を述べると、イリーナに135°くらいの角度で頭を上げるのだった。


「謝罪は後で!!!早く乗って!!!!」


クレイグに急かされたエストとイリーナが馬車に乗り込んだ途端馬車が動き始めた。


「ホントにギリギリだったんだ。」


「だから言ったでしょ!!!」


「だからって・・・イリーナも言うのが遅かったよ!!!」


「言ったじゃない!!時間ないって!!」


「『捕まる。』とまでは聞いてなかったよ!!!」


「何???じゃあ、あたしが悪いって言うの!?!?」


「そうじゃないよ。俺が悪いのは分かってるけど、一方的に俺だけ責めるのはおかしいって言う話!」


「だって悪いじゃないの!!」


「この分からずや!!」


「そっちだって!!!!」


「「ふん!!!!!!!!!!!!」」


「・・・・。」


入国する時とは違い、対面に座り合ったエストとイリーナの言い合いを、イリーナの隣に座で見ていたクレイグが大口を開け、目を大きく開き固まっていた。


イリーナは口をへの字にし、エストは口先をすぼめ、互いにそっぽを向いている均衡状態をクレイグの爆笑が切り崩した。


「ぶ!!!あはははははははははははははは!!!!イリーナもエスト君も、身なりや体格は大人になってきてるが、言い合いはちっちゃい頃と変わらないんだな!!」


「な!?そんな事ないわよ!」


「そんな事あるだろう。みんなで初めて工業地帯の見物に行った時も集合時間に遅れたお前とエスト君の言い合いと変わらなかったぞ。くふふ・・間に入ってあわあわしていたカリンちゃんが大変そうだったなぁ・・。」


「う・・・。」


昔の出来事を懐かしむように宙に目を向けているクレイグに対して、過去の出来事を掘り返されたイリーナはスカートを握り赤くなった顔を下に向けて隠した。


「あははははは!!ありましたね。あの時も俺が悪かったんですどね。」


出来事を思い返したエストも破顔する。


「いや、今回は入国する時にちゃんと伝えなかった私にも責任があるよ。2人ともそろそろ仲直りしてくれ。そろそろ外に出るよ。」


「あ・・・そうですね。あの!今回は本当にありがとうございました。助かりました。」


「いや、目的は果たせたかい?」


「はい。」


「そうか。それなら良かった。」


頷いたエストの真直ぐな目を見て、目を細めたクレイグの顔に夕陽のオレンジの光が差し込んでくると、エストの顔にも夕陽が当たり眩しそうに顔をしかめた。


馬車がすっぽり夕陽に包まれると一旦御者が馬車を止めたため、エストはここで馬車を降りて再び旅に出る事をクレイグとイリーナに告げた。


「分かった。会えて嬉しかったよ、エスト君。気を付けて旅を続けるんだよ。」


「俺もです。ありがとうございます。アリエナに帰ったらまた顔を出しますので。」


「うん。待ってるよ。」


笑顔でクレイグと言葉を交わし馬車を降りたエストは馬車に向かって一礼すると踵を返した。


「あ・・。」


背中を向けたエストに眉尻を下げて戸惑うイリーナだったが、一度意地を張るとなかなか素直になる事が出来ない彼女の性格を知っていたエストは特に気にする事無くイヴァリアの北東に向かい歩みを進めた。


もちろんクレイグもその事を知っていたのだが、エストと違いクレイグはイリーナのその部分をあまり良く思っていなかった。


そのため、いつもより低い声(本気で叱るときのトーン)でイリーナに問いかけた。


「いい加減にしなさい。このまましばらく離れ離れでいいのかい?イリーナ。」


「ごめんなさい。良くないです。」


そう絞るように声に出したイリーナは、馬車の窓を開けると背を向けて遠ざかっていくエストに向かって大きな声で叫んだ。



「ごめん!!!エスト!!!!私も悪かったわ!!!!」


歩きながら振り返ったエストは片手を上げて叫び返した。


「気にしてないよ!!ありがとう!!イリーナ!!」


「会えて嬉しかったわ!!!元気でいてね!!」


「俺も嬉しかったよ!!イリーナもね!!!」


後ろ歩きをしながら手を振ってそう叫んだエストは、またクルッと振り返ると口の両端を上げながら歩くスピードを上げた。


イヴァリアの南側に周り、正門を眺めながら「今度は自分の力で来るから。」と中にいるであろうカリンに誓うのだった。



『エスト!スアニャの風魔法で飛んで入ればいいミプ!!!』


『だめよミルプ。結界が張ってあるもの。』


『ミプゥゥ。』



「・・・・・。」

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