Ep9:「理由」
「その場所の名前は"神域"[ソーン樹海]。入ったものは2度と戻らないといわれる魔の樹海だ。」
ショウが指差した地図の場所は禍々しく真黒く塗られていた。
「まじか。本当に?村長であるお前がそれを許可するのか?」
信じられないというような表情でレンが聞いた。
「気が付いてから先ほどまで、ずっと考えていた。昨日話したと思うが、私だってこの村の掟に全てが全て賛成なわけではない。どうにかしたいと思ってはいたが行動に移せなかった。」
悔しそうな顔でショウは続ける。
「そこでユーキの件だ。このタイミングでリヴァイアサンや星人の出現。特にリヴァイアサンの件はこの島の掟にさらに疑問を持たざるを得ない出来事だった。」
「いや、ショウの心変わりはいいんだけども、、、こちらとしてはありがたいし。でもユーキはいいとしてもショウまで来たらこの村はどうなるんだよ。最悪みんな帰って来れなくなる可能性だってあるだろ?」
「それについては兄さんと話してある。今から村長就任の儀を執り行う。イレギュラーではあるが、14代村長は兄さん。ガン・フォレストだ。」
「ええ!まじか。ガンさんはいいの?」
「・・・」
少し黙った後、ガンは静かに切り出した。
「もともとは・・・俺が村長になる予定だった。。。ただ俺には特別強い魔力もないし、体は貧弱だ。魔物に殺され、すぐに村長交代、最悪就任の儀が行えず、結界が一時的に発動しない、なんてこともありえた。結果的にショウは短い期間で村長を降りるという決断を下したが、それは結果論でしかない。俺が村長だった場合に同じような、いやもっと悪い未来を予感していた。故に魔祖量、コントロール、またその他の面ともに優秀なショウに任すことにしたんだ。」
ガンが続ける。
「昨日の出来事を――、いや少し前から考えていた。レンが掟に疑問を持っていた事も知っていた。いつか俺が代わりに村長をやるから・・・と切り出そうとしていたが。結果オーライ。昨日の出来事はいいきっかけだった。」
少しの沈黙の後ショウが続ける。
「ディー・ノッドとやらの件も気になるが、今はまず力をつけなければ。そのための神域だ。」
しばらく黙って聞いていたユーキが手を挙げた。
「はい!あのさぁ。あんまりこの島の掟とか詳しくはわかんないから置いといて、神域ってのはどういう場所なんだ?そこに行くことがなんで力を手にすることに繋がるんだ?」
「うん。いい質問だ。ユーキ。」
微笑みながらレンはつづける。
「神域っていうのは、・・・実際にはソーン樹海以外知らないが、世界中に点在する"世の理が通じない場所"のことだ。通称ダンジョンとも呼ばれている。らしい。」
「世の理?」
「簡単に言うと有り得ない事がいくつも起こる場所のこと。中に入ると二度と戻っては来れないと謂われる場所だ。」
「い、いやいや。そこに連れて行こうとしてんのか?俺を??メリットが無いじゃないか。」
真当な理由だった。
「そうだね。ユーキを巻き込んでしまって申し訳ないが、君を連れて行かなければならない、と考えている。星人とダンジョンは切っても切り離せない場所だからだ。」
「え?どういう――」
「詳しい話はまた道中説明する。あと、二度と戻ってこれないっていうのは本に書いてあった内容だ。実際には戻ってきている。」
「あ、レンの親父さんか。。。」
ユーキは横目でレンを見ながら話した。
「そう。この島の外のダンジョンについては分からない。けどこの島のダンジョンだけで言うとディズさんだけがクリアしている。が、そもそもこの島には外界からの侵入を拒む仕掛けがあるから挑む人が居ないんだ。この村の人達は掟に何の疑問も持っていないことは話したが、まぁつまりパーセンテージで言うと100%クリアできている。」
ガンが続ける。
「だが。危険であることは変わりない。ソーン樹海は結界の外だ。魔物もいる。それ以外にも色々な危険が伴う。」
「いやまて、まず簡単にしろ難関にしろ、危険であることに変わりない結界の外に、ダンジョンに行く理由を聞いてないぞ!俺のことだけを考えて行くわけじゃないんだろ。」
ユーキは怪訝な顔で質問した。
「・・・神器(ジンキ)だ。」
レンが切り出した。
「神器?」
「ダンジョンの最下層にあるといわれるアーティファクト。世の理を覆す力を持つ神の道具。ソロ攻略にしろチーム攻略にしろ一回の攻略で獲得できる神器は2つ。二度は挑戦できない。」
レンが説明した。
「そう。その神器を手に入れるために行く。その神器を使いこの村の守りをより強固なものにする為だ。」
ショウが言った。
「そして・・・そうだな。まず、大きな目線で考えていることを言おう。今後私とレン。そしてユーキはこの島を離れ世界を旅する。」
「っな!!?」
レンは驚き声を上げた。
「ど、どういうことだ!なんでそこまでショウやユーキがついてくるんだよ!確かに俺はこの島の外に出たいよ!ずっと言ってきた。」
「そうだな。いろいろ理由はあるが、お前が納得しそうな理由はディズさんのことだ。今はまだ話せないが。」
「ど、どう言う、、、まさかやっぱり生きているとか?」
「いや、ディズさんは死んでいる。それは事実だ。」
「・・・信じないぞ。お前がどう言おうともそれだけは自分の目で、耳で確かめるまでは信じない。」
貫徹した意思でそう言うレン。
「まぁ、お前がどう考えようともいいが。他の理由としてはやはりユーキが元の世界に帰る方法を調べなくては。」
「あ、ありがとうな。」
少し照れながらユーキは言った。
「最初に言ったろう。いろんな理由があるうちの一つさ。感謝されるほどのことじゃない。あとは私が本に書かれている事だったり世界の事について知りたいという欲もある。」
さらにショウはつづけた。
「一番の大きな理由としては、やはり村のためだ。ソーン樹海で村を守るための神器が手に入るとは限らない。外の世界でもダンジョンに挑みいくつもの神器を手に入れこの島に持ち帰ることでこの村の守りをより強固にしたい。行く行くは・・・村を、いやこの島を開放したいとも考えている。」
力強くショウは言い放った。
「・・・ショウの理由は分かった。これから三人で神域に向かうことも分かった。でも、ユーキはどうなんだ?言っちゃ悪いが魔祖もない一般人が結界の外に出るのは、俺とショウがいたとしてもきついと思うぞ。」
それは確かにそうだった。この二人は悪いやつではない。むしろ知らない世界に放りだされて行く当てがないであろう俺をここまで良くしてくれた。迷惑はかけたくない。
するとショウが回答した。
「魔祖が感じられない件については先ほども言ったが、彼が星人だからだ。」
「いや、星人でもなんでも魔祖がないことには変わりないだろ。この世は魔祖で出来てるんだぞ?すべてにおいて魔祖は重要なファクターだろ。」
「基本的な知識や技術的なことはソーン樹海へ向かう道中で説明する。が簡単に説明しよう。と言っても本の知識によるもので確実なことは言えないが・・・」
そういうとショウは先ほどの緑色のカバーの本を取り出しページをめくり始めた。
「ここだ。"星人には魔祖が存在しない。それは異世界から来たからだろう。この世界で生まれ、死に、転生する魔祖が彼らに存在しないことは納得できる。しかし星人には別の力が組み込まれていることが分かっている。彼らはその力を使い魔祖に匹敵・・・いやそれ以上の魔力を引き出すことができる。我々はその別の力を<星の力>と呼んでいる。"」
「星の力・・・?」
「詳しくは道中だ。明日出発する。これから村長就任の儀を行う。お前たちは自宅に戻り明日への準備をしろ。」
一方的にそう告げられると、ガンとショウに部屋から追い出された。ガンとショウはそのまま書庫に残った。
「くそー、自己中だな。行こう。とりあえず帰ってからいろいろ考えよう。明日の朝またここに来て、んでソーン樹海に出発だ。」
「あ、あぁ。」
「ソーン樹海に行くとなればいろいろと準備が必要だな。」
そう言いながら前を歩くレン。
「星の力・・・」
-なんか無双できそうな感じが出てきな-
そんなことを思いながらユーキは一人こっそりにやけていた。
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