葵の花言葉は「正す」1
「玲菜、負けがあるからこその人生なのよ」
「私はまだあきらめてません」
「時に女性は潔く身を引くものなのよ」
春菊さんはフォローに回るが甘夏さんは現実を受け入れられないのか心の炎を燃え上がらせる。
「私たちがいつも見ている玲菜ちゃんとは違うわね。こんな姿を見てると本当にバルタザールさんそっくりね」
「そうそう、春菊さんのことを追いかけて日本まで来たことを思い出すわ」
「意地でも春菊さんと結婚するんだって言って春菊さんの住んでたアパート丸ごと買い上げて事あるごとに偶然を装って春菊さんを誘っていたわよね」
どうやら家の特定及び買い上げは親子揃っての慣習のようなものらしい。
それにバルタザールさんの話では母方の方は全てヤンデレと聞いているしおそらくその全ての遺伝子を受け継いでいるのだろう。
実に恐ろしい。
「一歩間違えれば犯罪に手を染めそうなんですけど、そんなことはしないんですよね」
「そうなんですか、意外ですね。バルタザールさんと初めて会った時は春菊さんのことを溺愛して嫌われたくないのに構ってアピールをこれでもかとしていましたし仕事以外ではダメ人間という印象でしたけど……」
「私と春菊さんが留学先で出会ってからバルタザールさんに会ったんだけど最初はほんとに初々しい感じでアプローチしてったんだけど日本人は告白しないと付き合えないことを知ってからバンバンアタックしてたわ。でも日本人は謙虚さを大切にすることを話したら遠回しだけど積極的な告白してたから犯罪に手を染めることは無かったわ」
「良かったわバルタザールさんも当時は春菊さんのことについて理解をしていたようで」
話を聞いていくと来夢さんのお母さんは春菊さんと留学先で知り合ったらしい。
というか犯罪に手を染めてないとはいえアパートを春菊さんの住んでる部屋以外を買い上げて偶然を装ってナンパするって普通に考えてストーカーでは?
春菊さんが追放しなかったのは満更でもなかったということなのだろうか?
当たり前の疑問を思い浮かべる蒼汰であるが女子会の奥様方は一切そこを追究せずに恋バナに花を咲かせようとする。
だが蒼汰のこの場を変えたいと思う羞恥心が女性のマシンガントークを遮らせた。
「えっと話しているところ悪いんですが流石にマンションの廊下の前で騒ぐのはよろしくないと思うんですけど」
「ママ、早く私と蒼汰君との思いでに浸りたいから家に入ってもいい」
「いいわよ。あの二人は何とかしておくから先に家の中に入ってなさい」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「いいのよ来夢に告白した蒼汰くんには私も話したかったしね。あと来夢、あなたが勝つとはまだ決まったわけじゃないからね。あ、そういえば蒼汰くんには自己紹介してなかったわね」
来夢さんのお母さんは左手を腰に手を当て人差し指を上に向ける
「私の名前は山羽
「え?」
「やっぱり覚えてないか、一応春菊さんと町内会の集まりで合ってるんだよ」
「町内会の集まり……」
「ほら廃品回収だったり神社のお祭りの準備だったりで集まったでしょう。もう廃品回収は無くなちゃったしお祭りの準備も神主さんたちがやるように成ってから私たちは引っ越しちゃったしまだ来夢が小学1年生くらい、蒼汰くんが小学2年生のときのことだったしね」
自分でもよく思い出せないが町内会の集まりで会っていたとはしかも葵さんのことを紋所の人と呼んでいたのは恥ずかしすぎる。
おそらくだが紋所の人と言ったのは当時幼稚園から帰ってきてテレビをつけていたお菓子を齧りながら母親が見ていた水戸黄門の紋所を見て親に質問をしたのが原因だ。
母親曰く水戸黄門を見た時の定番の目に入ったら痛いじゃんっていう質問をするのではなく水戸黄門の紋章について質問してきた変わった子だと今でも酒が入ると話すため間違ってはいないと思われる。
何を隠そう水戸黄門、水戸徳川の紋章は葵、三つ葉葵と呼ばれる家紋であった。
通常葵は二つ葉で三つ葉は神の奇跡とまで言われた突然変異と一説に言われている。
「なんというかすみませんでした」
「いいわよ。葵ってありふれた名前でそんな渾名つけられるのは面白かったしね」
「え?」
葵という名前は蒼汰世代から徐々に流行りだした名前で葵さん、春菊さんたちのような親世代ではそこまでありふれた名前ではなかった。
しかし葵さんはありふれた名前というので蒼汰には疑問が残った。
「葵って名前はね、向日葵って名前の子達と混ぜて言われてきたのよ」
「ママ、そればっかり、確かにママの卒業アルバムには葵はママを含めて2人、向日葵は3人も居た」
「なるほど、それは多いですね」
「中々に大変なのよ。……っさ家に入って、一応綺麗にはしてるから…あ、来夢、あなた今朝掃除は午後からやるとか言ってなかった?」
「OhhhhhhNooooooooooooooooo!!!!!!!!!!」
再会してから一番の大きな声で通常の3倍の速度で移動していった。
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