エーデルワイスの花言葉は「大切な思い出」2
「へえ来夢さんも輪廻開戦見てるんだ」
「うん、六道が好き」
「俺も六道のラスボス感は好きかな」
今作のアニメの話で盛り上がってると来夢は蒼汰の服の裾を掴み始めた。
「ん?どうかした?」
「家で遊ぶ」
「うーん今日は他にもよりたいところはあったけど……」
「久しぶり会った、もっと色々話したい」
どうして来てくれないのと身長の逆転した幼馴染の涙目的お願いは蒼汰の揺れ動く心の天秤を傾けるには十分だった。
今日は動画関係の作業は無いため良いかと思い始めた。
「じゃあ甘夏さんに連絡してからならいいよ」
「うん」
早速甘夏さんに電話を掛ける。
プ
——ガチャ——
「蒼汰さんどこに行っていたんですか!もう少しで衛星の監視システムの作動をお父さんに脅…お願いしてしまうところじゃなかったじゃありませんか」
ワンコールどころか一音で出た甘夏さんには驚いたがわざわざ自分を探すのに衛星を使って探そうというのだ。
金持ちの考えることはわからん。
「というか甘夏さん今エリクソンさんのことを脅そうとしたよね」
「そんなことは無いですよ。それより今どこに居るんですか!」
「今は行きつけの店に居るんだけど、来夢さん、ストリートピアノを弾いていた僕の幼馴染に会って家に来ないかって誘われてるから甘夏さんには申し訳ないけど一旦家に帰って貰えないかな?」
「バキバキバキバキ!!」
「え、甘夏さんそっちに何かあったの!?」
トゥートゥー
突如電話が切れた。
「なんか大きな音ともに電話が切れたみたい。心配だから探そうと思う。ごめんね来夢さん」
「大丈夫だよ。あとその電話はまたかかってくると思うよ」
その言葉と共に再度電話が鳴りだした。
「けどこれ知らない番号?」
「とりあえず出てみたら?多分それ海外の番号だよ」
確かに0120でも080や090でもない番号から始まっていたのでとりあえず来夢さんに促されるままに通話ボタンを押す。
「すみません蒼汰さん玲菜です。携帯を壊してしまいましたので仕事用の電話で掛けさせていただいております。それで忘れてた幼馴染でしかも女の家に上がり込むとは何事ですか!」
「携帯が壊れたって明らかに潰れるような感じで破壊される音が聞こえたんだけど」
「気のせいです。少々経年劣化が激しかったために壊れてしまったようです」
「でも甘夏さんの携帯はあいふぉ「それよりも!」……はい」
「それよりもそのハイエナの家に上がり込むことです!私は蒼汰さんをそんな風に育てたつもりはありません」
「いやそもそも俺は甘夏さんに育てられた覚えは無いんだけど」
「チッ」
電話の向こう側で舌打ちが聞こえた。
対して来夢さんは心配そうにのぞき込んでいた。
電話の音が外部にも聞こえていたのだろう。店長もドン引きしている。
「蒼汰さん、いいんですか?パソコンのデータがどうなっても、それどころか帰る場所も無くなるかもしれませんよ?」
こ、怖ええ!!
もはやヤンデレじゃなくてヤクザだよ。
極道入ってるよ!
「さあ早くハイエナの家に行くことを断りなさい!」
どう答えたモノかと考え込んでいると最速で催促しろとのお答えが来た。
仕方ないと思いつつ来夢さんに断ろうとしたとき……
「甘夏さんでしたっけ?それは日本の法律では脅迫罪にあたりますのでお引き取りを。それともし蒼汰の帰るところが無くなったら我が家に住んでもらうだけですしパソコンのデータは等に関しては法廷で会いましょうか?」
電話を取り上げ甘夏さんと張り合う異次元の生物を宿した幼馴染が居た。
まるで後ろに地獄の鬼が住み着いているかのように静かに空気が重くなっていく。
あまりの重圧感に店長は倒れ込んでいた。
「あなたはハイエナ!」
「群れから虐げられたライオンはハイエナにたかる」
「Shut up!You are rude!《黙れこの無礼者が!》」
段々化けの皮が剥がれてきている。
というか甘夏さんは怒ると英語に成るんだ。
こんなにも怖い声で言われているというのに来夢さんは一切動じることなく淡々とメモを取りながら対処法を考えていた。
そして彼女の導き出した答えとは
「あなたは一旦落ち着くべき、なんならあなたも一緒に来ればいい」
「ha?」
「え?」
甘夏さんと蒼汰の声が重なる。
甘夏さんにとっても予想外過ぎる言葉だったのか怒りを遠い彼方へ吹き飛ばしてくれたようだ。
「私があなたの家に蒼汰さんとお邪魔する?」
「そう」
「わかりましたそれなら許可を出します。今から合流しますので現在地を言ってください」
そういって来夢さんの家に甘夏さんと一緒に行くことが決まった。
来夢さんは甘夏さんに現在地を伝え電話を切り俺に返すとこう言った。
「大丈夫、束縛し続けなきゃ蒼汰を傍に置けない女なんかに私は負けないから」
まるで告白ともとれるその言葉、否、告白に甘夏さんの幻影は薄れつつあった。
だがそれは恋愛ではなく親愛のような気もした。
何はともあれ幼馴染との再会は蒼汰に様々な感情を植え付ける要因となるのだった。
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