ニンニクの花言葉は「息災」
引っ越し業者は今まで頼んできた大手のサービスを遥かに上回る丁寧さと迅速な荷物運びによって瞬く間に何もない部屋に変貌を遂げた。
荷物運びが終わるころに今回の元凶は現れた。
「これはこれは蒼汰さん、偶然ですね」
ビキビキという音共に血管という血管が浮かび上がる。
「あ゛(# ゚Д゚)」
蒼汰はクラスメイトに向ける眼ではないが思わず怒った目つきで
辛うじて正気保ってはいるがいつ襲い掛かられてもおかしくない雰囲気だった。
「うふふふ、私に襲い掛かってくれるならどんな形であれwelcome《歓迎する》ですが、今は新居の方に来てくれませんか。蒼汰さんの家具の配置などを早急に決める必要がありますので」
ハッと完全に正気に戻り冷静になる。
「わかったよ。それとネットの回線だけど光回線のKBBIの奴?」
「はい、私の会社の身勝手で引っ越してもらっているので契約負担金はこちらで全て持ちますし1月の契約期間中はご使用してもらう部屋は10GB/Sの最速契約にしていますのでご安心ください」
「それ、最初とはいえ高くつかない?」
「いえいえ、蒼汰さんが動画投稿者である上にここは日本の首都でもあり経済の中心部とも言える東京です。蒼汰さんが速度を気にしない筈がありませんよね。ホームゲートウェイも機種を確認したところ最上モデルでしたし」
実際俺が使ってるプランは5GBのプランだが昨日家に来た一刻にも満たない時間でそこまで調べるってスパイか何か?
出るところは出ててくびれもある「わがままぼでぃ」で「モデル体型」な甘夏さんにライダースーツを着た女盗賊の素質がありそうだな
モンキーパンチさんの漫画のようなことを考えていると頬を押さえつけられた。
「私は嘘をアクセサリーみたいに身に着けることはしませんよ」
「うん、まず手をどけてくれるかな?」
「嫌ですよ。なぜなら蒼汰さんは此処で私にファーストキスを捧げてもらいますから」
「うんとりあえず辞めようか」
グギギギギギ
互いに力が拮抗している。
だがそれも長くは持たなかった。
「あらま、若いっていいけど節度は保ってね。迫るのは良くないわよ。お母さんからも習ったでしょう甘夏さん」
ここに伝説の地母神大家さんが登場した。
女神というよりも親の目線での救世主、故に地母神!
甘夏さんも「こんなところにもお母さんの知り合いが!?」と呟いているし大家さんも春菊さんの知り合いなのだろう。
「あの、大家さんって春菊さんの知り合いですか?」
「さっき電話があったのよ。娘が迷惑かけて申し訳ないってね。それと娘さんがきっとアタックしてるだろうから警察呼ばれない内に止めてくれって言われてね。確かに痴女として通報されるのはいただけないわよね」
「いざとなればジャパニーズポリスは買収できるので大丈夫です」
あの、この子はギャングかマフィアなのかな
警察を買収するような人ってやっちゃえ昼産の社長でもそんなことやらないよ
ていうかよく見れば買収するって言った時闇の深い顔してたよ
あのパパンがゴットファザーだとしても俺は信じるかもしれないと本気で悩んでいたとき
「馬鹿なこと言わんなさんな。春菊さんの交流関係には警視総監居ますし無理だと思いますよ」
「く、流石お母さん。抜かりない」
「本気で買収しようと思ってたの?」
「そうですよ。これは愛の巣創造計画に必要なことなんですから絶対に成功させないといけない第一歩だったのに…」
本気で実家に帰ろうか考えた君なってきたな
甘夏さんも俺の異変に察したのか闇の深い眼差しに変え
「蒼汰さん、私から逃げると言うならどこまでも追いかけて差し上げますよ。私の総資産をもってすれば世界中のどこでさえあなたを見つけて見せます」
「ほんとに春菊ちゃんとは真逆の性格だね。ある意味反面教師として育ったのかしらね。ま、華道さんもあきらめろとは言わないけど難儀よね。本当に地の果てまで追いかけてきそうだし」
「大家さん、それ現実に起きそうなんで辞めてください」
「冗談なんかじゃありませんよ。例えアンデス山脈の頂上だろうと富士の樹海だろうと南極だろうとあなたを追い求めてどこまでも行きます」
大家さんはマジで引きつった顔をしている。
しかもボソッと「愛が重すぎない?これ、骨になっても抱いてそうな気がするんだけど」と恐ろしいことを口にしていた。
甘夏さんは甘夏さんで俺がチラチラ様子を伺うたびにモデルポーズを取ったりするものだから頭がクラクラしてきている。
「ん?」
頭がクラクラする?2次元好きのこの俺が?そんなはずはないそれにさっきから妙に野菜の香りがしてしょうがなかった
「甘夏さんなんか焚いた?」
「ち、気付かれてしまっては仕方がありませんね。ブロッコリーとニンニクから抽出した完全合法の成分を散布しているのでご安心ください。多少男性の方は性欲が強くなるかもしれませんが自然由来のモノなのでそこまで気にする必要はありませんよ」
「いやすぐに換気しないと……」
窓を開けようとしたとき大家さんの一瞬の隙をついたのか背後に胸を当ててきた。
「うふふ、今日こそはその
「おーい女の子が言っていい言葉じゃないよ」
「元大家は黙ってください。今日からは蒼汰さんの家賃と光熱費は無料でいいです。その代わり身体で払ってもらうだけですよ。もちろん食事もサービスしますしね」
「まあけどその彼が気絶してちゃ意味がないけどね」
「え?」
泡吹いて気絶してる蒼汰に気付きどさくさに紛れて下腹部も捜索するが……
「く、仕方ありません。新居に送ります」
ニンニクの花言葉を「息災」をうまくかけたつもりの甘夏だったが薬も多く盛れば毒となることを忘れていた。
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