死を束ねた花

米良真琴

第1話 プロローグ


 舟。 恐らく5人も乗れば沈みそうな小舟に僕と少女は乗っていた。

相乗りしている少女、及び船の浮かぶ場所には到底見覚えが無い。


少女の背の丈は僕より頭一つ分小さいぐらいだろうか。

それでも僕は座っていて、彼女は立っているので見上げる形になるが……。


正直人間離れした容姿だと思った。

一言に人間離れした容姿と言ったが、何も『手が四本』等のように分かりやすく異形をしているわけではない。


まず第一に髪が異常なまでに長い。

染料を感じさせない純粋で綺麗な金髪の髪が、膝下にまで届いている。


その他にも紅い目や、整いすぎている顔立ち等あるが……極めつけは服装。今日日フリルの付いたドレス――ついでに言うと黒が基調――なんざコスプレでもそうそう見ない。


と、ここまでの要素を改めて認識したところで、「人間離れした容姿」というよりは「人形のような容姿」と言った方が近いかなと思った。


じっと見ているのも失礼なので、視線をそらして辺りを見回そうにも舟の灯りの届く範囲には水面があるばかり。


夜だろうか? 暗がりで見えにくく、灯り以外に月などの光源も見当たらない。

しかし、朧げに見えた川の漂流物を見るに、この舟は川を上っているようだ。

漕ぎ手も居ないのに一体どうやって……。




「聞いてのとおり、これから働いてもらいます。」


「……。」


「死神の役割については伝えた通りです。細部が詳しく知りたい場合は冥府の書庫なりでどうぞ。」


「……。」


「これから人間界に行って実際に動いて貰いますが、最後に何か質問は?」


「一つ。ある。」


「どうぞ。」


「……何で死んだのに、働かされるんですか?」




人は誰しも呪われながら生きている。


では呪いとは何か?


――物事に干渉するに至った負の想いの力。


それこそが呪いの正体だ。


死してなお働く境遇にある僕の運命さだめ


そして死神などという役職を与えられた運命ふうんは……。


呪われていると言っても過言ではない。


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