最速で飛べるステキな関連リンク その1
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きょうだいを喪った子どものつどい・公開ブログ No.218276-1
タイトル:「トラウマになった瓦礫の山⑴」
[本文]
私の兄は学校で亡くなりました。
兄は瓦礫に埋もれた状態で見つかり、見つかったときにはもう生き返る見込みはなかったようです。
私は、兄があまり好きじゃなかったです。
学校に行くのが嫌だ、といつも言ってたのを覚えています。
遠いから億劫、歩くのがめんどくさい、ひきこもりになりたい、などなど……。ぐちぐち暗いことばかり言ってくる兄のことを、正直とても苦手に思ってました。もっと明るくなればいいのに。そしたら友達も増えて、学校に行くのが楽しくなるのに。でも妹の私がそう言っても、兄は逆に怒り出すだけ。お前には何もわかってない、お前は女だからわからないんだ、と。ときには殴り出すことさえありました。
母や父からは、兄とはなるべく関わらないように言われました。
でも確かに、今考えると、私の家は学校からちょっと遠かった。
両親を責めるわけじゃないのですが、「丘の上のステキな一軒家に住む」のが、両親にとって長年の夢だったそうです。だからうちはすごく見晴らしのいい丘の上にあって、通学路にはすごく坂道も多いし、スクールバスもないし、結構大変なんです。まして、置き勉を禁止されているせいで常に中身がぎっしり詰まった大きなランドセルと体育袋を背負って歩くには、肥満体質の兄にとってはあまりにも長い道のりだったんだと思います。
でも亡くなるまでの一ヶ月だけは、兄はとても幸せそうでした。
まあ幸せそうだったというだけで、学校の方には、もうその頃兄は行かなくなってしまってたんですけど。引きこもり……というのかな。たまに午後だけ母の車で送ってもらって行ったり、そういうことはしてたみたいでした。でも朝に私が玄関を出るときには、いつも兄の靴が残ったままでした。
またある時、お風呂上がりに髪を乾かしていたら、
「小学校最後の学年なんだから、せめて卒業式には出られるように頑張ろう」
っていうようなことを、リビングの方で父が言うのがちょっと聞こえてきたこともあります。でもいつも、兄の返事は小さくて弱々しく、よく聞こえなかったです。
そんな兄の卒業式の、まさか前日が、命日になるなんて思いもしなかった。
事故の二週間前の朝、私は大きな物音で目覚めました。
寝てたら突然、どしゃーん! という感じの音がして、家中の家族が起きました。兄の部屋から聞こえたので、行くと、兄が快活に笑っていました。びっくりしました。元気に笑っていることもそうですが、兄はその頃かなりの夜型人間になってたので、こんな朝早くに起きれてること自体に私はびっくりしました。
「お兄ちゃん、何してるの?」
そう聞いたら、兄は本当に久しぶりに見る明るい笑顔で答えました。
「要らないものを捨てているんだよ!」
私は上機嫌の兄に促されて、開け放たれた部屋の窓から外を見ました。
アスファルトに落ちたランドセルが、そこにありました。
金具と生地がズタズタに壊れて、中からたくさんの教科書やノートがグチャッ……と飛び出して、汚らしく一面に散らばっていました。
このランドセル事件の後も、兄は終始楽しそうなままでした。
両親からいくら怒られても平気そうにヘラヘラして、ずっと何もやる気がしないという感じだったのが急にスニーカーを新しく買ったりして常に陽気な感じでした。まるで別人みたいに。でも私は何も言わなかった。明るくなってよかったと思った。ランドセルの時はちょっとびっくりしたけど、それからはとっても穏やかで優しい兄になったから、私はこのまま兄が元に戻って、また一緒に学校に行けたらいいなって思いました。
だから兄が「家を引っ越したい」と言った時、私は兄に賛成しました。
けど、両親は賛成しなかった。
私はその夜、兄を励まそうと思って部屋に行ってみたんです。
でも兄の方は全然落ち込んでなかった。いつもはちょっと何かあったらすぐ落ち込む人なのにびっくりしたけど、その時にどうやら、兄にネットの友達がいるみたいだって気がつきました。パソコンをつけて、ぶつぶつ言ってて、でもそんな気味の悪いぶつぶつではなくて、ただ単に、独り言っていう感じの。
「やっぱり、申し込んでみるか」
特に繰り返していたのはこの言葉でした。
私には意味がわからなかったけど、「お兄ちゃんは大丈夫だよ」って笑って言ってくれたので、それならいいかと思って自分の部屋に戻ってしまいました。
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