アナザーハッキング～もう一人のストーリー～

第1話 善悪は闇の中

世の中には二種類の人間がいる。善人と悪人。

俺はどっちなんだろう。

人は時には善にもなるし、悪にもなる時もある。

だから、どっちか二種類だなんて考えること自体意味があるんだろうかと思う。

でも、

と思考を続けていく。

俺は今まで善人だと思っていた。近所の人には挨拶をしていたし、人には優しくしていたつもりだし、親も大切にしてきた。周りにも迷惑をかけることのないように生きてきた。

テレビを見ているとニュースが流れてきた。

「犯人がつかまりました。住所不定無職。20代の男が逮捕されたようです」

ここ2、3日流れていたニュース。新宿のマンションの5階に住む20代の女性が殺された事件だった。

ようやく捕まったのか、物騒な事件だよな。

そして、徐々に詳細がニュースで流されていた。

小中学生の同級生がインタビューに答えていた。

「昔は学級委員長もやってて、みんなを引っ張るリーダー的な存在でした」

近所の人のインタビューも出ていた。

「いつもうちの子供にも挨拶してくれたり、遊んだりしてくれたり。そんな人には見えませんでしたけど」

そして、司会者が語っていた。

「うーん、昔から優等生で、近所の評判も良かった青年らしいけど、男女関係のもつれですかね」

くだらない、本当にくだらないと思う。

子供時代に優等生の人間が犯罪を犯す一方、子供時代にぐれていたものも更生して真面目に働いてる人間もいる、そんな昔のことを引っ張り出しても何もわからない。仮に、その青年が挨拶していなかったら、昔から闇を抱えていたら、テレビでは分かった風に伝えるのだろう。

人は善と悪が存在する。

だから、昔はどうだとか、今はどうだとか、そんなのは無意味だ。

その瞬間どうだったか。それしかないのだ。