Ⅲ 00:01:05
それよりも、また無駄に時間を食ってしまった。
制限時間まであと00:01:05……。
バイクを疾走させたまま、腕時計へ視線を向ける俺の脳裏に秒を刻む鼓動音が静かに鳴り響く。
クソう! あのガキどもが! あと1分になってしまった……なんてことだ! 指定ポイントはまだなのか?
だが、その時、苛立つ俺の目に一筋の光明が飛び込んでくる……ターゲットが指定してきた
制限時間まであと00:00:55……。
「よおし! 見えたぞ、土井! あの建物で間違いないな?」
「ああ、釈。それが今陣銀行の本店だ! 急げ! もう時間がない」
俺は一応、本部の土井に確認をとってみるが、そこで間違いはないようだ。
「言われなくてわかっている。走行に集中するんで通信を切るぞ!」
制限時間まであと00:00:45……。
俺は秒を刻む鼓動を聴きながら、目標の銀行を全速力で目指す。
大丈夫だ。自分の力を信じろ、釈! 俺なら45秒もあれば余裕で間に合うはずだ。
制限時間まであと00:00:30……。
心の中で自分を励ましながら、俺はなんとか30秒前に銀行の駐車場へと滑り込んだ。
時間がない。俺はそのままバイクを正面入口に投げ出すと、
「待ちたまえ! なんなんだ君は!?」
だが、自動ドアが開くと同時に中へ飛び込んだ俺に、制服を着た警備員が立ち塞がってその足を止める。
それはそうだ。バイクを入口に放置するような輩を不審者と思わない方がどうかしてる。
制限時間まであと00:00:25……。
だが、説明しているような時間はない。
もしも俺が間に合わなかったら、おそろしく大変なことになることは火を見るより明らかだ。
「すまん。急いでるんだ。強行突破させてもらうぞ!」
「き、君、何をする! うわっ! …うぐ…」
申し訳ないが、俺は警備員の腕を取って背負い投げをすると、目もくれずにカウンターへと突撃する。
「きゃあぁぁぁーっ!」
制限時間まであと00:00:15……。
突進してくる俺の姿を見て、蒼ざめた女性行員達が甲高い悲鳴をあげるが、もうそんなのに構っている暇はない。
行員も客達も騒然と見つめる中、俺はカウンターを飛び越えると、ターゲットと思しきフロアの一番奥に控える人物の方へ向けて全力で駆ける。
制限時間まであと00:00:10……。
「ええい、どけっ! 邪魔だ! 時間がないんだ!」
呆然と立ち尽くす男性行員達が進路を邪魔するが、それを強引に掻き分けながらさらに急ぐ。
制限時間まであと00:00:05……。
「……な、なんなんだね?」
「…ハァ……ハァ……頭取の
ようやくターゲットの机の前までたどり着くと、俺は肩で息をしながら、唖然とこちらを見つめるその小柄な中年男性に尋ね返す。
「……そ、そうだが。な、なんの用だね?」
制限時間まであと00:00:03……。
よし。ターゲットに間違いない。なんとかギリギリ間に合ったようだ。
俺は自分の心臓とリンクする、秒を刻む鼓動の音を全身で感じながら、モスグリーンのバッグを下ろして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます