a love story saver -運命のひと
ひろひろ・みひろ
第1話 出会い
きづいたら目の前にまつげがあった
長いまつげ…
閉じられた目…
え?…
え?…
…じゃない!
「んん!なっ!!!」
反射的に手を前に押しだした
目の前の肌色の塊が傾く
「いてっ…」
焦点をあわせるとその塊が輪郭をもった
だれ…?…てかなに…?
「な、なにするんですか!!」
「え…なにって…チュー…??」
「……!!」
ひょうひょうとした顔をして目の前の男の子が言葉を発した
黒いすこしウェーブがかかったような髪
大きいアーモンドのような目
高い鼻
きれいな唇…
「…って…なにすんですか!」
私の顔をじっとみつめる目
「って…ていうかあなた誰!」
「え?あ、俺ですか?タナカです。」
そう言うと、身体を前にむけ、縁側に下ろした足をぶらぶらしだした
「あ、月…」
キャンパス内にある一番正門から離れたグランドのすぐ横に位置する合宿場
昔の田舎にあるような古い年季の入った一軒家で、このキャンパスが建てられた当初からあるらしい
最低限の食器や家具が揃っており、軽く80人程度は雑魚寝できる広さがあるので、運動部やその他の部活動、サークルの合宿のほかに、学生たちからは、学科や学部の交流会と称し、安価にのめる持ち込み可能居酒屋としてよく使用されていた
今日はうちの学科の夏恒例の飲み会
学科といっても私の所属する生活保健学科は1学年40人もいないから、4学年全員に声をかけ、今日集まったのはその中の有志が集まって80人ほど
話したことのない人もいたけれど、なんとなく同じ校舎にいることが多く顔は合わすので、自習室兼資料室も同じ建物内にある同じ部屋を使うから、顔はある程度は判別がつく
その日は初夏なのに湿度が高くて蒸し暑かったので、みんなよくのんだ。水のようにビールをのみ、近くの居酒屋から届けてもらったビールのケースは三ケースすべてあいた
夕方から始まった飲み会、各々さんざんしゃべり、のみ、しゃべり、のみ…を経てすっかり夜も更けた
気付いたら、半分ほどはすでにその場から消えており帰り、半分は酔いつぶれて畳にアザラシのように転がっていた
そんな後輩、先輩をみながら、縁側にすわって余った缶チューハイをのみながら、そろそろ帰ろうか、と庭を見ていた…時…だった
「ほら、みて、月」
「………え?あー…!じゃない!!人のはなし聞いてます!?」
「え、あ、うん、やって…ぼーっとしてたから」
といってこちらをみて口の端をあげて笑う
「は?!…ボーっとって…してない!…じゃな…」
「別に悪いことはしてないやん」
「な…」
「なに?もう一回しとく?」
「…はぁ?ふざけないで!」
飄々としたその態度と、目の前にいきなり現れた知らない男の子と、いきなりされた…ことに動揺にどうしていいかわからなくて、立ち上がった
「え?なに?かえるん?」
「…っ」
自分のしたことがわかってなさそうな何も考えてなさそうな顔…
その声を無視してもつれそうになる足を必死に動かし廊下へ向かった
「またね、、、サン」
あの夏になる一歩手前
そんな夜
それが湘…田中湘と出会った日…
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