第18話 一手を編み出せ
「はぁ......」
「どうしたんスか?ため息なんかついて」
「いや、考えてたんだが中々思いつかなくてな」
「攻撃方法の事ッスね」
「そゆこと」
「授業中もずっと上の空って感じだったッスもんね......」
「......それは別の要因だが」
「何か言ったッスか?」
「何も?」
目下の難題は黒岩の言った通り攻撃方法。格上の【
「考えても何も浮かばないなら体を動かすのが1番ッスよ」
「体を動かすって言ってもな......今日雨だぞ?」
「任せてくださいッス。アテがあるんで」
「そうか?なら気晴らしについて行くかな」
丁度雨続きで体を満足に動かせていなかった。丁度いい機会だろう。
「じゃあ少し先まで足を伸ばすッス」
「ok」
そうして俺たちは学園外に足を伸ばしたのであった。
カキーンと小気味良い音が反響する。飛翔するボールに対して黒岩の振ったバットが芯を捉え、誰が見てもわかるような快打を飛ばしていた。
その後も連続で飛んでくるボールをテンポ良く打ち返して行く。やがて料金分の球の発射が終わったようで、黒岩が戻ってくる。
「まさかバッティングセンターだったとはな」
「いやあ。俺、好きなんスよね」
「まあ分からなくはない」
バットが芯を捉えた時の感覚はいいものだ。
「暑くなって来たッスね......」
「まあ梅雨で雨だし、湿気のせいで蒸し暑いな」
「ちょっとアイス買って来るッス」
「おっ、じゃあ俺にも何か買って来てくれ」
「了解ッス!兄貴はバッティングでもしててくださいッス!」
そういうと黒岩はダッシュで出て行った。
「......やるか」
設置してある自販機に1プレイ分の料金を投入する。出てきたコインを持って100kmのボックスに投入。機械音が鳴り、ゲームの始まりを伝えた。
「......ッ!」
ボールに合わせてバットを振る。しかしボールを捉えはしたものの横へと逸れて行った。
その後も飛んでくるボールに対してイマイチ集中出来ず、結局快打は一本も飛ばせなかった。
「惜しかったッスね、兄貴」
「嫌味か?」
「んな事ないッスよ。これ、チョコアイスッス」
「サンキュー」
袋を開け、チョコのアイスキャンディを舐める。何故なら表面が薄らと溶け始め、垂れてきそうだったからである。
「おいおい溶けてんじゃねえか......」
「まあそりゃ兄貴がやってる間からありましたからね。蒸し蒸ししてるのもありますし溶けちゃったかも知んないッス......って俺のも溶けてるッスね」
黒岩が自分のアイスを向けて来る。そちらは先に買ったのか、俺のよりも溶けが早い。黒岩が急いでかぶりつくが......冷たさにこめかみのあたりが痛いのだろうか?片手を頭に当てた。
「大丈夫か?」
「一気に食うモンじゃないッス......」
「当たり前だな」
俺もこれ以上溶ける前に食ってしまおう。そう思って食べるペースを上げた。
「あーあ。溶けないアイスがあったらいいんスけどね」
「そうだな。夏場とか食いたい食いたい思っていざ食おうとすると一瞬で溶けるからな......」
「それはわかるッス」
まあ溶けないアイスなんてアイスじゃないだろう。大体そんなものが出来る日が来るのだろうか......
「ん?」
「どうしたんスか?」
「あ、いや......」
突然頭の中に電流が流れたような感覚。この感じは......何かを思いついたのに近い。なんだ、何を思い出した......?
「溶けない、アイス......?」
溶けないアイス......溶けないアイス......溶けない、溶けない......
「あ!?」
ついつい勢いよく立ち上がってしまった。
「ど、どうしたんスか急に」
「思いついたんだよ!」
「へ?」
「攻撃方法!お手柄だ黒岩!」
「よくわかんないんスけどありがとうございますッス!」
「おう!よくやったよくやった!」
「あーあーあー、揺らさないでくださいッス!」
喜びのあまり黒岩の体を前後に強く揺すってしまった。
まあ思いつきはしたが、それが本当に出来るのか確証は無い。しかし......幻坂は言っていた。イメージが大事だと。
そしてそのイメージする事は......俺の
「帰るわ」
立ち上がったまま荷物を纏める。
「え?」
「今すぐ特訓始めるから帰るわ」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいッス~!」
初戦まで後2週間。それまでに今考えた【
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