第2話

 ある日、僕はいつもの道を車で走っていました。そしていつものように長い橋を渡りかけた時、ふと橋の下を見おろしました。すると、思いもかけないものが目に入ってきたのです。それは馬でした。1頭の馬が橋桁の陰にかくれるようにして、しんと立っていたのです。僕は思わず後ろをふりかえりましたが、もう車は通り過ぎてしまって、馬は見えなくなっていました。朝の混んでいる時間だったので、車を止めるわけにもいかず、しかたなく、僕は通り過ぎてしまいました。

「まあ馬を飼っている人も中にはいるだろうし、たまたま水でも飲ませに来たんだろう。」

そう思って、そのまま気にもとめずにいました。いつもだったら仕事の忙しさにまぎれて、こんなことはすぐに忘れてしまうはずですが、今度はちがいました。妙にあの時の光景が、心から離れないのです。それに、なんだかどこかで見たことがあるような、ちょっとふしぎな気持もしていました。それで次の日曜日に、もう1回行ってみることにしました。

 夕方近くなってから車を走らせて、あの場所に行ってみました。今度は橋を渡らずに、土手をおりて河原の方へ行きました。すると、すぐにあの橋桁が見えてきました。車をおりてそばまで行きましたが、橋桁のこっちがわには何もありません。ちょっとがっかりしましたが、むこうがわものぞいてみることにしました。

 するとどうでしょう。そこにはむこうがわが見えないほどびっしりと、すすきが生い茂っているではありませんか。そればかりではありません。よくみると、その茂みの中には細い道があるのです。ちょっと見ただけではわかりませんが、ちょうど山の中のけものみちのようでした。

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