第137話 歴史

 【魔王領域軍サタンレギオン・エクセルキトゥス


 それは、今から40年以上前、突如として大陸南方に現れて、戦乱真っ只中の諸国に侵攻を行った【魔族】の軍隊である。


 当時の大陸南方は、大小様々な国が日夜、戦に明け暮れては覇を競っており、多くの血が大地に流れていた。


 そんなある日、大陸中央に広がる【ゼルトザーム大森林】を抜けて、正体不明の一団が戦争中の小国に急襲をかけ、またたく間にこれを攻め落としたのであった。


 この一団こそが【魔王】の尖兵である【魔王領域軍サタンレギオン・エクセルキトゥス】であった。


 その後、魔王領域軍は攻め落とした国の人間を自軍の先鋒として組み込み、いわば肉の盾として他国に攻め入ることで、自軍の兵士の損耗を最小限に抑えることに成功。

 

 こうして、後々の統治を考えることなく、ただひたすら略奪と破壊のみを行う軍の侵略が続いたのであった。

 それはまるで蝗害こうがいのように大陸南方諸国を侵食したのであった。


 大陸南方の諸国が、このままでは滅亡の危機だと悟ったときには、すでに多くの国が魔王領域軍に支配されていた。


 そんな中、ただ奪われ、殺され、凌辱される人々の慟哭は、ひとりの男を奮い立たせた。


 それが、後の世に【始王】の称号を冠することになる【勇者】オイゲンであった。


 彼は、仲間たちとともに旅を続け、やがては魔王領域軍に支配された国々を開放するに至る。


 とある国を開放した際に、オイゲンは未だに日和見を決め込む諸国に対してこう告げる。


「人々よ!国々よ!今こそ立て!この未曾有の危機において、いつまで目を閉じ、耳を塞ぐか!汝らの隣人は友、隣国は同朋なり!そこに人種や部族の差はない!我が人々のさきがけとならん!さあ、続け!我らの未来を取り戻すために!」


 この宣言こそが、後の『蒼の月宣言』に繋がる『勇者の奪還宣言』である。


 彼は、自らがこの大戦の旗頭となり、大陸南方の人々へ魔王領域軍との徹底抗戦を呼びかけたのだった。


 こうして、魔王領域軍という外敵に対して、大陸南方の人々が手を取るに至ったのであった。


 その後、【謀将】マリア・フォン・シュウィンガーに率いられた多国籍軍が、魔王領域軍との戦いに勝ち続け、とある公国跡地に封じ込める。


 その間に、大森林を逆侵攻し、大陸北方の魔族領に少数で乗り込んだオイゲンたちが、魔王を討ち取ったことでこの大戦は終焉を迎えたのであった。


 こうして、魔王領域軍は、公国跡地に取り残される。


 帰国し、人々から望まれて【ノイモント王国】の王位に就いたオイゲンは、魔王領域軍の残党に降伏を認めた。

 それは、それ以上の無益な血涙が流れることを疎んだからであった。


 降伏した残党のうち、大戦中、積極的に無抵抗な人民を害した者はことごとく処刑しものの、それ以外―――兵士として連れてこられた者たちにあっては、一定の恩赦を与える。


 最初に魔王領域軍に攻め滅ぼされ、今は住む者の途絶えた公国跡地で生きることを認めたのであった。



「それが現在の【バスカヴィル】子爵領です」


 村長の【イズレンディア】は、ここに至る経緯をゆっくりと話し始める。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


難産でした。

後々、訂正するかも。

話が進まないので、午後7時にもう一話。

   

 



  


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