第73話 御礼
アトモスの嘆きは完全に無視して、アルフォンスは奴隷たちの首輪を取り外すために集中している。
次に首輪を取り外すことにしたのは、またおかしな命令をされて勝手に動き出さないようにとデュークが抱えているアリスだった。
「すぐに終わるからね」
「……うん」
「大丈夫。このお兄ちゃんはすごいから。きっと助けてくれる。この中の誰よりも能力が高くて、優しいんだ」
アリスを安心させるために、デュークがアルフォンスを高く評価するが、当の本人はそこまで持ち上げられると照れてしまう。
「デュークさん、あまり褒められると……」
「全てホントのこと。何なら、これまでに見てきたすごい例を挙げていくか?」
「……いや、いいです」
余計な反論をすると、それ以上に言葉が返ってきそうだったので、アルフォンスは沈黙を選択する。
「ふふふ、アルフォンスさまは皆さんから信頼されているのですね」
「えっ……いやっ、その」
アルフォンスが年上の冒険者からも一目置かれている姿を見て、キャロルが素直な感想を伝える。
すると少年は、耳まで真っ赤にして口ごもってしまう。
キャロルに褒められただけで、どうしてこんなに照れてしまうのか、アルフォンス自身にも理解できていない。
アルフォンスは、首を左右に振って気持ち切り替えると、アリスの首輪を取り外す。
首輪に埋め込まれた新緑の宝石に手を触れたアルフォンスが強弱をつけて魔力を流すと、乾いた音とともに宝石が砕け、首輪が千切れて地面に落ちる。
「なん……だと……」
「マジかよ……」
「すげえええええッス!」
「
その様子を見ていた【
アルフォンスの規格外さを知っているアトモスたちですらこれであるのだから、初めてその様子を目の当たりにした生き残りの冒険者たちにあっては、驚きすぎて言葉も出ない。
そんな静まり返った雰囲気の中、少女の喜びの声が響き渡る。
「あああっ、とれたああああ!」
首元からスルリと落ちた首輪の残骸を見て、アリスは小躍りして喜ぶ。
その瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
「良かった。良かった」
その様子に自分のことのように喜ぶデューク。
「あっ……ありがどうおにいぢゃん!」
「いえいえ、どういたしまして」
泣き笑いで礼をするアリス。
そして、彼女は自分を助けてくれたデュークに向き直って深々と頭を下げて礼をする。
「おじちゃん、アリスをたすけてくれてありがと」
「う……うん、でもまだデュークはお兄ちゃんか……な……」
アリスからおじちゃん呼ばわりされたデュークはちょっと傷心。
「おじちゃん……だと……」
「ガハハハッ!『おじちゃん』ようやったぞ!」
「プッ、クククククク……。おじ……おじちゃんッスか……」
「フフフフフ……良くやった『おじちゃん』」
すると、そのやり取りを見ていた他のパーティーメンバーは、笑いを堪えられない。
「うるさい、お前ら!そもそもイーサンは、同じ年だ……」
「いや、双子と言えどもそこは譲れない。頑張れ『おじちゃん』」
奴隷たちの開放の見込みが立ったことにより、明るい雰囲気が戦場に漂うのであった。
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