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 なんとか建設が間に合った新校舎で、すぐに次の日から授業が始まった。


 自分は、頭に包帯をして授業に出た。頭の傷は、たいしたことがなかった。外傷性脳損傷の後遺症もない。


 彼女。


 一昨日までの彼女は、そこにはなかった。


 小さく縮こまって、陽気や明るさとは真逆の静かさで、そこにいる。少しだけ、震えているのかもしれない。


 最初こそクラスの人間全員で彼女を取り囲んで心配していたが、彼女が泣き出したので、すぐに雲の子を散らすように彼女の周りから離れていった。


 教室のなかでは、それをただ、眺めているだけだった。特に、なにもしない。ただ、眺めるだけ。


 休み時間になったら、新しい校舎の立入禁止扱いになっている屋上に、行った。


 少しして。彼女も屋上に来て。


 抱きついてきた。両手で、支える。


 彼女の源体験は、夜目覚めたときに、誰もいない部屋でひとりだったという、こわさ。だから、夜になると、動けなくなる。彼女には、親も親族もいない。捨てられたのか、それとも、最初から一人だったのか。わからない。


 そして、一人でいるのがこわいから、ひっしに明るく振る舞って。陽気な雰囲気を出して。無理をして人の輪のなかに入っていった。


 腕のなかで、震えながら泣く彼女。


 きっと、限界だったのだろう。自分の内面にあるこわさと、外面の陽気さの乖離。それが、彼女を、もう戻れないところまで追い詰めた。


 休み時間が終わると、彼女は自分の腕から離れ、震えながら教室に戻っていく。


 自分も、教室に戻って。授業中。小さく縮こまって静かに泣いている彼女を、眺めた。


 休み時間に、彼女を抱き留めて。授業時間に、彼女を見つめる。


 昼休みも彼女を抱きしめているので、お昼ごはん抜きだった。授業が終わると、おなかがすいた。


 放課後、彼女が教室から足早に出ていくのを見届けて、そのあと、自分も教室を出る。


 次の日も。


 その次の日も。


 数日間、そういう日が続いて。


 そして彼女は。


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