第5話:龍

 聖女マリーナは、厳重な隠蔽魔術に封印された聖地を、更に厳重な隠蔽魔法で隠すために、王家の宝物庫から慰謝料代わりに持ち出しててきた、宝物群や魔晶石を使って大規模な魔法陣を描いた。

 聖女マリーナは結構な性格をしていて、浮気を繰り返すシャルルの慰謝料として、フレン王家の宝物は全てもらって当然だと考えていた。


 聖女マリーナ自身は、結婚前に狩りで使っていた鎧に身を包んで守りを固め、武器を手にして戦いになった場合にも備えた。

 この辺が聖女マリーナの強かな所で、基本懇願に行くのだが、チャンスがあれば龍を従えは配下に加える事も、斃して素材を手に入れる事も視野に入れていた。

 龍の素材で作った武具と防具があれば、神と戦う場合になっても十分な備えができると考えていた。


「龍殿、私の味方になってもらいたい」


 龍の住処に辿り着いた聖女マリーナは、単刀直入に申し入れた。

 金色に輝く金髪と黄金の瞳、白というよりも薄い黄金色に輝く肌。

 聖女マリーナの前にいるモノは、元の黄金龍の姿を彷彿させる人型をとっていた。

 黄金龍が施した防御結界の全てを解除破壊した聖女マリーナは、疲労困憊していたが、それを全く悟らせない堂々とした態度だった。

 まあ、黄金龍を騙す事などできないと分かっていたが、それを黄金龍に見せない矜持を持っているところを、見せつかなければいけないと思っていた。


「よくここまで来たな聖女マリーナ。

 この千年でここに辿り着いたのはお前が始めてだ、マリーナ。

 それに免じて返事をくれてやる、味方になって俺に何の得があるマリーナ。

 シャルルの時のように、俺の子供を生んでくれるというのか?」


 龍は人間世界の事をよく知っていた。

 そして龍の言葉は、完全の聖女マリーナを馬鹿にしていた。

 あのような馬鹿に股を開いて子を生んだマリーナを蔑んでいた。

 そんなお前ならば、異種族の龍にも股を開き、子供も産めるだろうと、馬鹿にし蔑んでいたのだ。


「私に子供を生ませたいのなら、私を惚れさせなさい。

 私を惚れさせるくらいの漢気を見せたなら、言われなくても私から寝室に誘ってあげるわよ」


「くっくっくっく、シャルルがお前を惚れさせるだけの漢気を見せたというのか?

 これは笑わせてくれる、ワッハハハハ!」


「私は人間だから、人間の子供を生むには人間の男が必要なの。

 相手が勇者だろうが英雄豪傑だろうが、下劣なシャルルであろうが、関係ないわ。

 どうせ誰でもいいのなら、王家の種を手に入れて、争うことなく国を手に入れようと思っただけよ」

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