第402話 格好つけてんじゃねぇ、この「ちんぴら!」は小倉名物です(税込400円)
酔っぱらった勢いで、また宗像先生の下らないゲームへ参加することになった。
ミハイルが作った豪華なメニューは、既に品切れ状態。
大人気で30分もしないうちに、みんなが食べてしまった。
俺ですら、あまり口に出来なかったぜ……クソがっ。
もう中央に設置したテーブルは使わないだろう、と宗像先生がテーブルクロスを外した。
2つの机を少し間隔をあけて並べる。
そこへイスを4つほど持って来て、向かい合わせに置いた。
どうやら、これが試合会場のようだ。
「これでよし。じゃあ、今から『聖夜の相手は誰だ!? びしょ濡れアームレスリング大会』を始めるぞ!」
酷い名前の大会だ……。
ドン引きする俺とは違い、ミハイルとマリアはやる気マンマンのようだ。
「オレが絶対、優勝してクリスマスはアンナとデートさせるからな!」
「ふん。いい度胸ね。10年分の想いの差を見せつけてあげるわ」
話が勝手に進んでいるが……ちょっと待てよ。
最近、俺もミハイルが可愛すぎて、女扱いしているけど。
男子と女子は戦ったら、ダメなんじゃないのか?
マリアも男に負けないぐらいの馬鹿力を持ってはいるが。
さすがに今回は……。そう思った俺は、壇上に立つ宗像先生の元へ向かう。
「宗像先生。今回の大会って男女は戦ったらダメですよね?」
「そりゃそうだろな。ゴリラみたいな女でも、性別が違うからな」
しれっと酷いこと言うなぁ。
「じゃあ、ミハイルとマリアは戦ったら、良くないでしょ? あの2人、試合する気マンマンですよ」
俺がそう言うと、先生はしばらく考え込んだ後、こう答えた。
「ふむ……あの2人か。確かに双子ってぐらい似たような顔だし、それに体格も同じ。なら、良いんじゃないのか?」
「へ?」
「古賀は尻を叩いたら、女みたいなカワイイ声で叫ぶから、女子部門にさせよう! 面白そうだしな♪」
「えぇ……」
※
結局、宗像先生の思いつきで、ミハイルだけは女子部門へ参加することに。
アームレスリング大会については、強制ではない。あくまでも、任意だ。
だから、消極的な真面目生徒たちは、やりたがらなかった。
男子部門からは、リキと一だけ……では盛り上がらないと、宗像先生が怒り出し。
俺とおかっぱ頭の双子、日田兄弟の片割れを無理やり参加させた。
1回戦はリキと日田 真二。弟の方だ。
兄は身体が弱いため、彼が参加したらしい。
結果は、瞬殺。
ほのかと聖夜を楽しみたいリキが、開始の合図と共に、腕をへし折るように机へ叩きつけた。
悲鳴を上げて、机から転げ落ちる日田。
かわいそう……。
次は俺の番だ。
机に座り、右腕を差し出すと相手選手が優しく俺の手を握りしめる。
とても柔らかい。
「あ、あの……新宮さん。あまり痛くしないでくださいね」
視線を上げて、相手の顔をよく見る。
そこには、頬を赤くしたサキュバスがいた。
「一か。まあゲームだからな、適当にやろうな」
「はい、クリスマス会ですもんね。楽しくしましょう」
と優しく微笑んでくれたのだが……。
宗像先生が俺たちの拳に手を当てて、「それでは2回戦、はじめっ!」と叫んだ瞬間。
可愛らしいサキュバスの表情は失せ、鬼のような形相になる。
眉をひそめて、俺の手をぐしゃっと握り潰す。
その痛みに耐えられず、俺は力を緩めてしまう。
「フンッ!」
普段はそんな低い声を出さないのに、この時ばかりは漢だった。
それも戦に出るような、侍。
反対方向に叩きつけられた俺の腕は、感覚が麻痺していた。
これ……折れてるよね?
「勝者! 住吉 一! 決勝戦は、千鳥と住吉で決まりだ!」
宗像先生が一の手を取り、試合の終わりを告げる。
「やったぁ~♪ リキ様と戦えるぅ~」
可愛らしくその場で、ぴょんぴょんと跳ねてみせるサキュバス。
だが、そんなことよりも見てよ。
俺の右腕……ぶら~んとして、全然力が入らないの。
痛みすら感じない。
どうやったら、治るの?
ねぇ、サンタさんたら……。
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