第四章 オタク訪問

第22話 キンコーンカンコーン


 クソみたいな体育(ただの遊び)が終わり、教室へと戻った。


 イスに座るとため息と共に、安堵が生まれる。

 やっと解放されたのだ。

 この一ツ橋高校の校舎。いや、刑務所からな。


 各々がリュックサックに荷物をつめ、笑い声が聞こえる。

 そうリア充グループもつまらんのだ、この校舎が。

 彼らも高卒という資格が欲しいだけ。

 つまりは賃金アップや職務上の資格欲しさで入学したに過ぎない。

 まあ俺はちょっと『違う理由』で入学したのだが……。


「なあタクト!」

 あれミハイルさん? なんで満面の笑顔で俺を見てんの?


「どうした、古賀?」

「あ、あのさ……」

 なにをモジモジしている? また聖水か?

 お花を摘むなら、どこぞの花畑にでもいってこい。


「あの……一緒に帰らないか?」

「え……」

 一瞬、ミハイルの『帰らないか?』が『やらないか?』に聞こえたのは、俺が突発性難聴なのか?


「まあ……構わんが」

「じゃ、やくそくだゾ!」

 おんめーは小学生か!

 俺のポ●モンはやらんぞ?


 バシッ! と雑なドアの音が聞こえると、一人のビッチが現れた。


「それでは帰りのホームルームをはじめるぞ~」


 ボインボイン言わすな! 宗像!

 乳バンドをしっかりつけて固定しろ!

 つけてその揺れ方なら、整形してこい!


「はじめてのスクリーングは楽しかったか? お前ら!」

 なにを嬉しそうに語るのだ? 宗像先生よ。


 シーン……としたさっぶい空気。

 これはリア充も非リア充も同じである。

 草!


「なんだ? お前ら? 元気がないな? 私はこうやってお前らがスクリーングに来てくれたことが本当にうれしいゾ♪」

 キモいウインク付きか……。

 教育委員会に報告とか可能ですかね?


「じゃ、レポート返すぞ! 一番! 新宮!」

「はい……」

 席を立ちあがると、キモい巨乳教師の元へとトボトボ歩く。


「声が小さい!」

「はぁい~」

「たくっ! お前はケツを叩いてやらんといかんな、新宮」

 いや、セクハラじゃないですか……。


「ほい、よくできました!」

「ありがとうございます」


 用紙を覗けば『オールA』

 まあ当然だろな、ラジオでアンサーありきの勉強だからな。

 鼻で笑いながら着席する。


「じゃあ二番! 古賀!」

「っす……」

 いや、なんで俺だけ怒られたの? ミハイルも怒れよ! 宗像!


「古賀……お前、もうちょっとがんばれよ?」

 なんかめっさ『この子かわいそう……』みたいな憐みの顔で見てはるやん、宗像先生。

「っす……」

 青ざめた顔でレポートを見るミハイル。

 『私の年収低すぎ!』ぐらいの顔だな……。

 どれ突っ込んでやるか。



 席についたミハイルへ声をかける。

「おい、古賀。レポートどうだった?」

「え……DとかEばっかり……」

 そんな涙目にならんでも……。

 ちなみにD判定はギリギリセーフ。単位はもらえる。

 E判定はやり直しである。

 つまりアウト~! なのだ。

 だが、風にきいた噂だと、E判定はなかなかでないと聞いたが……。


「お前、ラジオ聞いたのか?」

「え? なにそれ?」

 驚愕の顔で俺を見つめるんじゃない!

 可愛すぎるんだよ、お前の顔。

 このハーフ美人が!


「ラジオ聞いてたら楽勝だぞ?」

「そうなんだ……タクトはどうだったの?」

「俺か? オールAだが」

「す、すごいな! タクトって!」

 え? 驚くところですかね?

 逆にバカにされた気分。


「な、なあ今度オレに、べんきょー教えてくれよ☆」

 えー、金もらえないならいやだ~

「ま、構わんが……正直ラジオ聞けば一発だぞ?」

「ラジオ? オレの家にはそんなのないけど?」

「そ、そうか……」

 あえて突っ込むのはやめよう。可哀そうなお家なのかもしれない。



「じゃあ、お前ら気をつけて帰ろよ!」


 気が付けば、レポートは全員に返却され、各々が素早く教室を出る。

 しかし、その動きを止めたのはセクハラ教師、宗像。


「あと! 帰りに遊ぶのは構わんが……ラブホ行ったやつはレポート増やすぞ! 絶対にだ!」


 みんな一斉に硬直しちゃったじゃないですか……。

 呆れた顔で帰る生徒に、苦笑いするリア充(いくつもりか!)、ドン引きする非リア充。


「なあタクト……ラブホってなんだ?」

「え……」

 それ童貞の俺に聞きます?

 ミハイルさん?



「ミーシャ、帰ろ」

 花鶴ここあか、なぜ俺の机の上に座る?

 お前の臭そうなパンティーが丸見えだ。

 そんなミニスカ、どこで売ってんの?


「イヤだ! 俺はタクトと帰る!」

「ミハイル、タクオと帰るんか?」

 千鳥のおっさん、タクオってもう定着しているんですか?

 やめません?


「そだね。オタッキーならいいっしょ」

 よくねーし、なにがお前らの中でいいんだ? ミハイルはお前たちの子供か?

 そう言い残すと『それいけ! ダイコン号』のお二人は去っていった。

 あの二人は付き合っているのかな?


「じゃあ……タクト、いこ?」

 なぜ上目遣いで誘うような顔をする?

「ああ……」

 なんか下校するのに、級友と一緒に歩くのなんて久しぶり……。

 え? 人生ではじめてか?

 ブッ飛び~!

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