第18話 対決! リアルJK 対 男の娘


 俺とミハイルは腐女子の北神 ほのかの『ホモォォォ!』光線から逃れるため、教室棟をあとにした。

 次の授業はみんなが大嫌い体育だ。

 しかも2時間も。

 なんですかね~ やりたくありませんね~



「なぁ……なんでさっきオレに昼ごはんを分けてくれたんだ?」

 うつむいたまま、時折チラチラと俺の顔を伺う。

「え? だから言っただろ? 俺の気が済まん」

 ミハイルは目を丸くして言う。

「どういうこと?」

「俺は不平等であることが大嫌いだ。なんでも白黒ハッキリさせたい」

「?」

「わかりやすく言うとだな……俺とお前が体育でかけっこするよな?」

「うん」

「それで空腹のお前が本来の力を出せずに負けたら、俺がズルしたみたいだろ?」

「えぇ、そんなことで……」

 めっさひいてるやん、ミハイルさん。


「そんなことだから大切なのだ!」

「そ、そっか……」

 だからまた『ゆかちゃん』がお友達になっているよ? いや、今はアスファルトか。

 


 二人してとぼとぼ歩く。校舎を抜けて、武道館へと向かった。

 今日は全日制コースの部活動はなく、ありがたく利用していいんだとよ。

 仰々しいまでの入口を抜けると、地下に降りる。

 朝もらったスケジュール表にはそう示されているからだ。



「えっと……男子はA室か」

「うん」

 俺は一応、マナーとしてノックする。

 特に反応なし。

 入るか、ドアノブを回して扉を開く……。


「きゃあああ!」


「え?」

 目の前に現れたのは、制服組の女子。

 スカートを太ももの辺りで、静止していた。

 シマシマ、パンティーだ~ わぁい!


「なにやってんだよ、タクト! 早く閉めてやれよ!」

 ミハイルの注意がなかったら、30分は見ていたかもしれん。

 扉を閉めた後、とりあえず、深呼吸する。

 こういう時は落ち着いて対処するのが肝心だ。

 あくまでも紳士的に対応すれば、更によろしいですよ。


「なあ、俺。部屋、間違ってないよな?」

「オレが知るわけないじゃん! この変態オタク!」

「なんでお前が怒っているんだ? 怒るのは見られた彼女だろ?」

「うるさいっ!」

 超怖いけど、超かわいいなこいつの顔。


 俺らが会話を楽しむ間も、更衣室からはキンキン声が扉を叩く。

 しかも、なにかを扉に投げているようだ。

 なんで女ってのはものを投げたがるかね。


「おい! そこの女子! ここは男子更衣室だろが!?」


「〇☆✖§Δ\~!!!」

 なに言っているか、わかんねぇ。


「謝罪はする! だから堪えてくれないか!?」

「……」


 しばらくすると、制服を着たボーイッシュな女子が現れた。

 褐色でショートカット。

 しかも校則違反なミニ丈。

 どこかで見た顔だ。


「あっ! やっぱり新宮先輩じゃないですか!」

 そう言うと女は俺の頬をビンタする。


「いたっ……」

「お、おい! おまえ、何も殴ることないだろ!」

 いや、ミハイルに言われたくないんだけど。


「はぁ!? 女の子の裸見たんでしょうが! お嫁にいけなくなったらどうすんのよ!」

「おまえの裸なんて、誰も興味ないよ~ だあっ!」

 ん? そう言えば、なぜ俺以外の生徒たちはミハイルを女の子と間違えないのだ。


「なあ、コスプレ女子に問いたい」

「誰がコスプレですか!? この前言ったでしょ! 私は正真正銘のリアルJKです!」

 ああ、確か……赤坂 ひなただったか?


「お前……赤坂か?」

「そうですけど! し・ん・ぐ・う先輩!」

「あのな、こいつを見て“可愛い”と思うか?」

 言いながらミハイルの顔を指す。


「なっ!」

 ボッと音を立てて、顔が赤くなるミハイル。


「はぁ? 私、中性的な男子って嫌いなんですけど?」

 ふむ、やはり女の子としては認識していない……。

「それよりなんなんですか! この前はかっこつけて私のこと『認識した』とか言ってたくせに!」

「いや、覚えているとも……だが、その先ほど見てしまったパンティーの方がインパクト強くてな……」

 

 ダンッ!!!


「いっでぇ~!」

 なにこれ、両脚にダブル踏みつけとか信じられます?

 左右からミハイルと赤坂の攻撃、こうかはばつぐんだ!


「なんで……古賀まで……」

「タクトが悪いんだろ!」

「そうですよ! 女の子のパ、パ、パ……」

 皆まで言えずに顔を赤らめる。


「パンティーだろ?」

「最低っ!」

 そう言って、赤くなってない方の頬をビンタして、足早に去っていった。


「なんだったんだ……あいつは」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る